猫景色 私の枕の右側
私の枕の右側 そこは君の場所
灯りを消して 目を閉じると
まもなく 君はやってくる
クンクンと 確かめるように 匂いを嗅いで
くるりと 「の」の字に 丸くなる
私の枕の右側 そこは君の場所
指先で そっと 触れると
それを合図に グルグルと
小さく喉を 鳴らし始める
朝 目覚めると
私の枕は 君のもの
私の布団も 君のもの
枕に ちゃっかり 頭を乗せて
しかも 布団の真ん中で
毛布にくるまり 眠る君
私の布団の左端 そこが私の場所
君はきっと 小さなダイダラボッチ
真夜中に だいぶ活躍したらしい
私の枕の右側 そこは君の場所
夢うつつで 手を伸ばし
指先に触れる ひんやりとした
シーツの冷たさに
いきなり 目が覚める
そして はっきりと 理解する
そうか
君は いないのか
5月終わりの 湿った風を捉えて
旅立っていったんだ
起き上がり カーテンをそっと開けると
まだ暗い空に ぽっかりと
半分だけの月が 浮かび
風には 金木犀の香りが 混じっている
君のために 一つだけ
願い事を しようかな…
もし 君が
いつか
どこかで
なにかに
生まれ変わるのなら
どうか
健やかな一生を 送れますように
振り返ると
私の枕が ぽつんと 転がっている
私の枕の右側
やはり
そこは
君の場所
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