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ある夜の電話

昨夜、ステークホルダー・エンゲージメントについて書かれた新聞記事を探そうと過去の朝刊をパラパラ捲っていたら、

突然電話が鳴る。

誰だろう?
こんな遅い時間に。

スマートフォンのディスプレイを見ると

東京医科大学病院

と表示されていた。
(相手が発信者通知設定をしているから電話番号ではなく名称が出てきたのだろう。)

一瞬、悪い想像が脳裏をよぎる。
恐る恐る電話に出ると

東京医科大学病院循環器内科の○○です。
■■様のお電話でよろしいでしょうか?

全然よろしくない。
間違い電話であることを伝えても電話口は訝し気な様子で

090-×××9-××××の番号ではないですか?

いや何で僕が嘘言わないといけないんや。
と思いつつ

すみません、この携帯番号は090-×××6-××××ですよ。

と伝えた。
ようやく納得してもらえたのか電話は終わる。

東京医科大学病院の循環器内科から間違い電話がかかってくるとは。
しばらくドキドキしていた。

自分の身内や知り合いが何らかの事情で病院に搬送されるか、あるいは重篤な状況で命のろうそくが消えそうか、または消えてしまったのか、色々なことを想像してしまった。

とりあえず間違い電話で良かったと胸をなでおろす。

しかし、僕と似ている携帯電話番号をもつ誰かにとっては心穏やかではない夜になったわけだ。

地方で一人暮らして会社と社宅とスーパーマーケットの往復生活を送っていると、世の中から隔てられているような錯覚を覚える。

静かな生活は悪くないけれど、内地(北海道の人は本州のことを内地という)とのつながりが希薄になっているように感じる。今日も新しい命が生まれ、誰かを愛し、誰かを憎み、家族になったり、家族を喪ったり、一人で生涯を閉じるノンフィクションドラマがどこかで起きている。

間違い電話をかけてきた医師?は研修医なのか。
こんな遅い時間帯に家族への説明をするのに疲弊していないだろうか。
そして家族は医師の説明に動揺しないだろうか。

間違い電話がきっかけで一人、色々なことに思いを馳せた夏の終わりの夜だった。

今日も皆様にとって良い一日になりますように。
できることなら結婚式場など、おめでたいニュースを届ける間違い電話がかかってきてほしいな。


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竹内康司
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