読書録「寝ながら学べる構造主義」2011/2023
内田樹「寝ながら学べる構造主義」(文春新書)
約5か月前、新千歳空港で時間つぶしのために購入した本。
大学入試の現代文の問題に出典されていたことをおぼろげながら覚えていたので手に取った。
「超カンタン現代思想入門書」というキャッチコピーの通り平易な文体で書かれており、肩ひじ張らずに読むことができた。同時に読んでいた「新証券市場入門」がチンプンカンプンだっただけに卑近な例示が多い本書が格段に読みやすく感じられたのだろう。
本書によると「構造主義」とは、所属している社会集団が選択した、受容したものだけを個人は「見せられ」、「感じさせられ」、「考えさせられている」状況にあり、「自律的な主体」と信じられている「自由」や「自律性」も限定的なものにすぎないという事実を考察するものである。
すなわち社会構造、システム(言語体系)等によって個人の主観が決定されると構造主義は主張する。構造主義の源流となったのはマルクス、フロイト、ニーチェで、その後、ソシュールの言語学が「ことばとは『ものの名前』ではない」という重要な知見を発表した。
例えば、日本語で「犬」と呼ぶものを英語ではdog、フランス語ではchien、ドイツ語ではHundと呼ぶように、ものの呼び方は「言語共同体ごとにご自由にどうぞ」ということになっている。
つまり、「ものの名前は人間が勝手につけた」という「カタログ言語観」が基本にある。言語活動とは「すでに分節されたもの」に名を与えるのではなく、満天の星を星座に分かつように非定型的なものに切り分ける作業そのものなのだ。
ある観念があらかじめ存在し、それに名前がつくのではなく、名前が付くことで、ある観念が人間の思考の中に存在するようになるのだ。
構造主義はその後、レヴィ・ストロース、フーコー、バルト、ラカンによって言語学以外の領域でも社会構造が人間の行動に与える影響について考察を深め、発達していく。
昨夜(2023/10/2)、新潟県三条市で開催された絵本作家の井上奈奈先生のトークイベントに参加した。
その中で「やむにやまれぬ自分の想いを絵本にすることで、ものとの関係性をつくることができる」とお話されていたので、本書のことを思い出した。
今日も皆様にとってよい一日でありますように。
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