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VUCA時代のアリとキリギリス

これは「アリとキリギリス」の後日談。

その年は天候不順で思うようにアリたちは食料を調達できていなかった。
雨が降らずに日照り続きかと思えば集中豪雨で洪水のように水が押し寄せて家の周りは浸水し流されて行方不明になる仲間も多かった。

アリは焦っていた。

このままでは備蓄した食料も底を尽く。
どうする、どうする。
と頭を抱えていても状況は改善しないし、陰鬱な仲間の顔をみても不安がつのるばかりだ。行く当てもないけれど、じっとしているよりかは幾分マシなので外に出て食料を探しに出かける。

最近は食料の確保も命懸けだ。
どうやらヒトという大型の生き物が森を切り拓き何かを建造している。
アリ以外の生き物たちも開発の犠牲になった。

昔はたくさん存在していたヒト以外の生き物たちが絶滅危惧植物になった。
ヒトが「絶滅危惧種」と騒ぎ始めるより、ずっと以前から生態系内では危機感を感じていた。

あぁ、今日も十分な食料を確保できない。
一族は自分の代で死に絶えてしまうのか…。

それも詮無き事なのか。
たとえヒトによる開発の影響だとしても自然の変化には敵わない。
何も収穫はないまま下を向き、徒労感と諦観に似たものが入り混じった心境で家に帰ろうとしていた。

するとどこからともなく摩擦音が聞こえてきた。

あっ、キリギリスだ。

一匹のキリギリスが自分の全存在をかけて、翅をこすり合わせながら音色を奏でている。

昔のアリはキリギリスを蔑んだ目で見ていたが、キリギリスだって一所懸命に生きているんだよな。

それに音楽を奏でているばかりでない。
ちゃんと子孫を残そうと必死に生活をしている。
だって生きるために他の種族のアリのところに嘆願に行くなんて普通の生き物はできない。

生きるためならどんなことだってやる。

キリギリスの音色を聴きながらアリは涙を流していた。
それはキリギリスの音楽に心が震えたのと同時に環境が変化しても懸命にもがき続ける姿に心打たれたからだ。

そうだな、自分たちの生き方をオワコンだなんて言わせない。
いろんなものを取り入れながら自分たちも変わっていかないと。

アリは少し頭を上げてキリギリスのビートに合わせて歩き出した。


だから色んな個性を認め合うのは大事ってこと。

今日も皆様にとって、良い1日になりますように。

初の試み。
日経新聞の記事から着想を得ました。
いかがでしたでしょうか?

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