明日を描こうともがきながら 今夢の中へ 形ないものの輝きをそっとそっと抱きしめて 進むの
はじめに注意書きを。
土曜日の午前中。
夕方のインスタライブまでの間、会社から取得要請があった資格試験の勉強をすべく母校の図書館へ行った。
以前に卒業生枠で図書館利用証を取得したので入館が非常に楽だし館内に所蔵されている数学書の貸し出しもできるからお財布にも優しい。
長岡にいた頃、数学書を沢山購入したのは近くに専門書が充実した図書館がなかったからだ。俱知安から札幌まで行くのに90分くらいかかるけれど心理的距離は近いような感じがする。
ちょうどお昼を過ぎて昼食をとろうと本を閉じ図書館をあとにする。
さて何を食べようかな。
ふと右手に見えるサクシュコトニ川の近くから子どもたちの歓声が聞こえる。キラキラ反射する水面を眺めスマホで写真を撮ろうと立ち止まると
とん
と何かがぶつかった。
振り返ると水色のワンピースを着た小さな女の子がいる。
4歳か5歳ぐらいだろうか。
僕が急に立ち止まったから追突してしまったのだろう。
あ、ごめんね。
だいじょぶ?
女の子に話しかけると、ちょっぴりはにかんだような表情をみせる。
僕も普通の人生を歩んでいたら、この女の子ぐらいの子どもがいたのかもしれない。
そんなことを考えていたら
女の子はスタスタと母親のもとへ向かっていった。
女の子の行く先を眺めると息をのんでしまった。
そこに君がいたから。
10年前に付き合っていたかつての恋人らしき女性が女の子のそばにいた。
僕は軽く会釈したら向こうもちょっと頭を下げた。
あれ、気づいていないかな。
今となっては本当に昔の恋人だったのか、知る術はない。
あるいは他人の空似だったのかもしれない。
どちらにしろ、それでもいいんだって思った。
僕の大切な人々が幸せに暮らしていれば他には何もいらない。
ただただ水色ワンピの女の子の未来が平穏なものであればいい。
そんなことを考えながら正門近くのカフェで一人お昼ご飯を食べた。
今日も皆様にとって良い一日になりますように。
この物語は実話をもとにしたフィクションです。
どのあたりがフィクションなのかは聡明な読者の皆様のご想像におまかせします。