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いとしのボイスレコーダー
ちょっと、いや大分変な中学生だったことは先日のハードボイルドな記事で露呈してしまった。
そんな黒歴史エピソードを一つ思い出した。
中学校の修学旅行は京都・奈良・大阪の関西方面を巡るというもので、ゆとり世代全盛期の僕らは「総合的な学習の時間」という名の下、自分たちが見学、体験したい場所をあらかじめリサーチし公共交通機関や四つ葉タクシーを駆使しながら生徒のみで巡るという自由放任主義的なものだった。
当時の僕は、映画「冷静と情熱のあいだ」を見てすぐに影響されて修復士になりたいと密かに憧れていた。
修復士という職業につけば竹野内豊になれると思い込んでいたイタすぎる中学生である。
さてそんなわけで、僕は同じ班のメンバーを説得して京都国立博物館を取材する工程を組み入れた。
我ながらよくそんな依頼ができたものだなと思うが、新潟の中学生が京都国立博物館の代表番号に電話をかけて文化財の修復について見学させていただきたいということを伝えた。
当然、重要文化財を取り扱っているので一般の方は見学できないとやんわり断られる。そのかわりに電話で対応して頂いた学芸員さんは修復工房は難しいものの、博物館の仕事についてなら館内の展示物を見ながら案内できますとのこと。
せっかく同じ班の皆の了承を得たのだから京都国立博物館の学芸員のKさんを取材するということになった。
当日、僕はボイスレコーダーを持参して学芸員のKさんを訪ねた。
Kさんは30代後半くらいの小柄な女性。
学校の先生とは異なる知的で落ち着いた雰囲気に、大人の女性のもつ奥ゆかしさにドキドキした。
博物館の仕事は「収集・展示・研究」の3つがあります。
私たちは文化財を公開し歴史的価値や文化的意義を広く伝えるために様々な企画にも取り組んでいます。
たしかそのようなことを話されたと思う。
文化財の素晴らしさを説明するKさんの人柄にすっかり魅了され、修復士から学芸員に早速進路を鞍替えするのだった。
修学旅行が終わり長岡に戻った後も折に触れてKさんのお話を録音したボイスレコーダーを聞いてニヤニヤするというイタイ中学生だった。
今でもKさんは京都国立博物館で働いているのかな。
今日も皆様にとって、良い一日になりますように。
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