「神田伊織 二ツ目昇進 講談会」令和四年九月十九日(@日本橋亭)
「神田伊織 二ツ目昇進 講談会」令和四年九月十九日(@日本橋亭)
神田伊織さんのことを知ったのは、会社でPODCAST STATIONをOPENして
発信しようと決まった2020年の秋のことだった。
ちょうど、コロナが始まり、ありとあらゆる活動が制限され
たくさんの方々がコロナに感染して亡くなられ、
私たちはこれからどうやって生きていこうか?みたいなことを考えていた時期。
会社のオンラインの集まりで「伝統芸能」が好きな人が集まって語ろう!
という催しがあり、その中で若手から音声コンテンツの発信をやってみたい!
ということで始めたのが
PODCAST STAITON BRAIN DRAINというものだった。
https://note.com/braindrain8460
今や、8つほどの番組がその名の下に発信されているが、
そのコンテンツのチャンネルの中に「集まれ伝統芸能部」というのがあり、
その中のゲストとして当時は「前座」を務めていた神田伊織さんが来てくれたのだった。
大野さんの友人ということでの参加だった。
師匠である神田香織さんのお許しを得て2回ほどゲストに来ていただき
「講談」のことについてお話を伺った。
https://open.spotify.com/episode/4N7FzIK1kBmU56c6vMZ23b
https://www.youtube.com/watch?v=heZt9FTs_uY
私自身、講談を見たのは数えるほどしかなく、何も語るものを持っていないのだが、
この収録で数時間にわたって伊織さんのお話を聞いて、
講談とは?そして、講談師とはなどのことを知ることが出来た。
その神田伊織さんが、満を持して今年、二ツ目に昇進されると。
それを記念した講談会が開かれると言うことで伺った。
前座ではなく二ツ目の講談師としての独演会。
前座では許されないと、この日初めて知ったのだがマクラを語る神田伊織さん。
その座り姿がスーッとしていて背筋の伸びた感じが清々しい。
伊織さんは6年間前座を務めたらしい。
通常は3-4年で二ツ目に昇進するらしいが、
まさに前座3年目の2020年にコロナ禍に。
多くのイベントや公演が緊急事態宣言下で中止になり、
その時期に「お披露目公演」など出来る環境ではなかった。
その時期に伊織さんにPODCASTにゲストで来ていただいたのだが、
いかに「講談」の世界が奥深いか?面白いか?
というのを熱心に語るのを拝見した。
そして講談は演目が落語とは違ってけた違いに多く、
それらの「講談本」を読み発掘し日々学んでいるというお話を伺った。
フランス語にも堪能で
「国語」を教えておられたとこの日、神田香織師匠がおっしゃっているのを伺った。
しかも滑舌が良く、独特の声の調子がいい。
日々学ぶ神田伊織さんの姿に、私は桂米朝師匠の若き頃を思った。
もちろん桂米朝さんの著書や評伝で知ったのだが、
米朝師匠も古典落語の話を研究し続けた。
伊織さんにはその研究者的な才もあるのだなとお話を聞いていて感じた。
伊織さんが講談師になろうと決意して神田香織師匠に師事を仰いだのは
33歳か34歳の頃。そして今、伊織さんは40歳になられたらしい。
本当になりたいと思いすべてをなげうってこの世界に入って来た人の
覚悟がお話ぶりから伺える。
今回、講談読みを聴いて大いに納得。
講談師も落語家も同じなのかも知れないがテキストがあり
その物語をどう解釈してどう演じるのか?が演者に問われてくる。
物語と登場人物への理解と人間に対する洞察量が試される。
それゆえ、その精進には終わりがないのだろう!
終わりがない仕事というのは常に上を上をというのがあり、
その努力は果てしない。
ということは生涯にわたって取り組める仕事でもある。
この日はまず1話目で「吃(ども)の又平」。あらすじは、
http://koudanmemo.blog.fc2.com/blog-entry-408.html
そして仲入り後にもうひとつ
菊池寛の「恩讐の彼方に」をベースにした講談。
「青の洞門」というのが題名なのかどうか?
あらすじは、
http://koudanfan.web.fc2.com/arasuji/01-20_aonodoumon.htm
講談好きな方はこうしてあらすじをまとめる方がおられるのだろうか?
今後、神田伊織さんがどのように進化されていくのかが楽しみ。
そして講談本研究者らしく、新たな物語を世に出すことも
伊織さんの大きなテーマの一つではないだろうか?
さらには神田香織師匠の下で、自ら創作講談も書かれており、
作家・創作者としての活動も楽しみである。
「レ・ミゼラブル」や「東京大空襲」をお題にしたものなど創作の幅も広い。
毎日のように二ツ目としての公演があり
日々、新たな演目を読んでいると伺い驚いた!
立川流では真打になるのに「五十席」だったか?を覚えないと
真打になれないというようなことを聴いたことがあるが、
神田伊織は二ツ目にしてこのようなことを淡々と行っている。
前座時代がコロナによって延長となり、
その時期にありとあらゆる講談本などの勉強をし
満を持して6年目に二ツ目になったということが
逆に神田伊織の講談師としてのチカラを付けてくれたのかも知れない。
これから、ますます大きな舞台に挑戦されるであろう神田伊織さんに
応援のエールを送ります!
そして世間に消費されず末永く、無数の講談本を多くの人に伝える使命を
まっとうして欲しいと願います!
この日は、講談会のチケットを購入するとお祝いに
「神田伊織の手ぬぐい」を頂くことが出来た。