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外来リハビリでEvidence Based Practiceは可能か?

BRAINでは脳卒中EBPプログラムという、脳卒中リハビリにおけるEvidence Based Practice(以下、EBP)を学ぶための6ヶ月のオンラインセミナーを運営しています。

受講者の方からいただく質問の中で、『外来リハビリや訪問リハビリでもEBPは可能か?』があります。

EBPは臨床研究に基づいて進めていきます。

例えば、『脳卒中患者さんに対してトレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間実施した結果、歩行見守りの患者さんが歩行自立した』というエビデンスに基づき、『自分の担当患者さん(歩行見守り)にもトレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間実施して、歩行自立を目指そう』のように進めていきます。

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もちろん、この手続きの前に臨床疑問を立案したり、ガイドラインやシステマティックレビューを参照する手続きもあるのですが、最終的には臨床研究に基づいて具体的なプログラムを立てます。

なのでEBPを進める上では臨床研究のプロトコルをセラピスト自身が再現できるか?という問題があります。

この問題は2つに大別されます。

ひとつは『質を再現できるか?』、ふたつ目は『量を再現できるか?』です。

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質を再現できるか?

質を再現するためには以下のような要素が必要になります。

1. 使用される機器が病院・施設にあるか?
2. セラピストがそのリハビリ方法について知識があるか?

例えば臨床研究で『トレッドミルトレーニングを実施した』とか『電気刺激を実施した』というプロトコルに対し、病院や施設にトレッドミルマシンや電気刺激装置が置かれていないと、再現することができません。

あるいは、『課題指向型訓練を実施した』とか『バランス練習を実施した』というプロトコルを再現しようと思っても、セラピストが課題指向型訓練を知らなかったり、バランス練習を知らなかったりすると再現できません。

このように、『質を再現できるか?』という問題は、病院や施設の環境、セラピストの知識・スキルによって左右されます。

量を再現できるか?

量を再現するためには以下のような要素が必要になります。

1. 1回あたりの時間を確保できるか?
2. 週あたりの頻度を確保できるか?
3. リハビリ実施期間を確保できるか?

例えば、上記の例で挙げた『脳卒中患者さんに対してトレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間実施した結果、歩行見守りの患者さんが歩行自立した』というエビデンスに基づく場合、自分の担当患者さん(歩行見守り)もトレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間実施する必要があります。

臨床研究のエビデンスはあくまでも『○○を〜〜やったら△△という結果になった』というデータです。

例えば、『トレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間やったら、歩行見守りの患者さんが歩行自立した』というデータです。

なので、このエビデンスを参考にして同じ結果(今回の例で言うと歩行自立)を目指す場合、エビデンスと同じプロトコルを再現しないといけません。

ですので、質の問題もありますが、量も同じように再現する必要があります。

生活期の脳卒中患者さんを対象にした臨床研究は週3回以上の介入が多い

生活期(発症6ヶ月以上)の脳卒中患者さんにリハビリを実施し、改善を報告した研究は山のようにあります。

ただ、ほとんどの研究は週3回以上介入しています。

言い換えると、週3回以上介入することで生活期の患者さんも何かしら良くなる可能性が高い、ということです。

外来リハは月13単位制限がある

一方、日本国内で生活期の脳卒中患者さんにリハビリを提供する主要な手段は『外来リハビリ』や『訪問看護リハビリ』ですが、いずれも制限があります。

例えば、外来リハビリは基本的に、月13単位までとされています。

わかりやすく言い換えると、1回40分を週1〜2回、になります。

この時間制限の中では臨床研究のプロトコルの『量』を再現することが難しくなります。

例えば、エビデンスで『トレッドミルトレーニングを30分、週5回、4週間実施した』と記載されている場合、外来リハビリでは40分、週1〜2回しか提供できないため週3〜4回分が足りない、ということになります。

リハビリにおいては量が重要です。

どれだけ良いリハビリを受けたとしても、量が足りなければよくなっていくことは難しいです。

私たちがダイエットするとき、週1回だけ運動と良質な食事を摂ったとしても痩せるのは難しいですよね。

それと同じです。

外来リハビリでEvidence Based Practiceは可能か?

そして本題に戻ります。

こういった背景があるので、外来リハビリでEBPは難しいのではないか、と考えられる方が多いのですが、結論を言えば外来リハビリでEBPは可能です。

考え方としては2つあります。

1. 量を再現しない
2. 自主トレで量を確保する

今回は2.に絞って深掘りします。

自主トレで量を確保する

外来リハビリで週1〜2回しかできないのであれば、残りの週3〜4回を自主トレーニングで補おう、という考え方です。

メリット・デメリットは下記の通りです。

メリット
エビデンスで得られた結果を再現できる可能性が高くなる
デメリット
自主トレーニングでプロトコルを再現できなければ効果がない

特に考えないといけないのはデメリットの方です。

セラピストから患者さんへ『自主トレで補いましょう!外来リハビリでやっていることを自宅(もしくはスポーツジム)でやってください!』と伝えるだけではまず再現できません。

問題は2つあります。

1. 患者さんとご家族様がリハビリの質を再現できない
2. 患者さんとご家族様が転倒や怪我への対応ができない
3. 脱落率が高い

例えばトレッドミルトレーニングを行う場合、『60%HRmaxで歩く』とか『歩幅が小さくなったら歩行速度を落とす』などの細かいテクニックが求められる場合があります。

セラピストは患者さんの脈拍をとったり、歩幅をチェックしたりしながら歩行速度などの強度を調整しますが、患者さんやご家族様が自分たちで行うことは難しいです。

また、リスク管理についても同様です。

セラピストは自然と転倒予防・怪我予防ができるポジションについたり、いざとなったら支えられる筋力がありますが、ご家族様が転倒・怪我予防を行えるのかという問題があります。

しっかりとマニュアル・説明書を作ってお渡しするとか、外来リハビリでご家族様を交えて一緒に練習するなどの工夫をする必要があります。

最後に脱落率の問題があります。

ホームエクササイズは脱落率が高いことが知られていて、およそ35%の患者さんがセラピストから教わったエクササイズを途中でやめてしまうことが明らかになっています。

そして、『社会規範』というバイアスがあり、セラピストが『自主トレできてますか?』と聞いたとき、患者さんはできていなくても『できてます』と答えられることがあります。

社会規範というのは、『望ましい姿でいよう』という想いから生じるバイアスです。

例えば職場の上司から『勉強してる?』と聞かれて、『(週1回くらいは本読むなぁ)』と思っても、『してます。』と答えたくなりますよね。

それと同じです。

なので、ホームエクササイズの管理はすごく難しいのです。

これに対してはチェックリストや日記をつけていただくなどの工夫が必要になります。

当然ながら、週5回やらなければいけないプロトコルを外来リハビリの週1回+ホームエクササイズの週1〜2回で合計週2〜3回しかやらなければ、思うような結果は期待できません。

これらの問題を乗り越えられれば補うことができる

ここまで難しさばかり話をしてきましたが、反対に言えば、これらをきっちり守ることができればホームエクササイズで量を補うことは可能です。

繰り返しになりますが、生活期の脳卒中患者さんもリハビリをすることで良くなると報告したエビデンスは山のようにあります。

工夫しながら量を確保し、患者さんの改善に貢献しましょう!

脳卒中EBPプログラム【Evidence Based Practiceコース】
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