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痘痕も靨も

○登場人物



手野内 歩世男(テノウチ フセオ)  男。大学生。20歳。

藍枚 萌子(アイマイ モコ)    女。大学生。20歳。

1 とある空き教室


2020年。
机を真ん中に向かい合わせに座る手野内歩世男(20)と藍枚萌子(20) 。

萌子がスマホで歩世男に何かを見せている。
2人共、マスクをしている。

萌子 「で、ここがこの前行ったカフェ」
歩世男 「へぇ。お洒落なところだね」
萌子 「だよね。私ちょっと緊張しちゃった」
歩世男 「そうなの?でも俺、こういうところ興味あるな」
萌子 「(目を見開き) 知らなかった。てっきりカフェ巡りとか、苦手だと思ってた」
歩世男 「えっ?なんで?」
萌子 「うぅん…なんとなく?」
歩世男 「そんなことないよ、なじみがないだけ。今度連れてってよ」
萌子 「…うん(スマホをしまって) 」
歩世男 「(スマホをしまう萌子を見て)あ、そういや明日までの小レポート書いてないや」
萌子 「え、それ大丈夫なの?」
歩世男 「明日の23時59分までだからまぁ余裕でしょ。文字数少ないし」
萌子 「ふ〜ん。なんて授業?楽単?」
歩世男 「なんとかの心理みたいなやつ。授業全部オンデマンドだし、小レポートの課題も滅多に出ないし楽単」
萌子 「え〜、じゃあそっちにすれば良かった。私謎に対面多い授業取っちゃってさ、明日も対面なの」
歩世男 「(目を細めて)それはだるいな〜、ドンマイドンマイ」

萌子、歩世男の顔をじっと見る。

歩世男 「萌子?」
萌子 「あのさ」
歩世男 「ん?」
萌子 「歩世男は、私といてさ、楽しい?」
歩世男 「急にどうしたの?楽しいよ」
萌子 「…そっか」
歩世男 「…萌子は、楽しくない?」
萌子 「…わかんない」
歩世男 「え」
萌子 「わかんないの」
歩世男 「いや、わかんない、って…」
萌子 「(一息おいて) ごめん、別れて欲しい」
歩世男 「(目を見開き) えっ… …どうして?」
萌子 「ごめん…(項垂れて)……ごめん」
歩世男 「俺が何言っても、ダメそう?」
萌子 「…ごめんね」

萌子、椅子を引いて立ち上がろうとする。

歩世男 「俺は、俺は楽しかったよ、萌子」

歩世男の目が細くなる。

萌子 「私も…そう思いたかった。でも私、その言葉が本心だとどうしても思えない」
歩世男 「(机に手をついて)なんでっ」
萌子 「(遮るように) だって私・・・今あなたが笑ってるのかすらわからない」

歩世男を残し、去っていく萌子。


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