月は白く、兎は黒く。 第一話
第一話
初めて見た時、なんの冗談なのかと、私は何度も自分の目を擦った。
それでも、その現象は変わらずそこに在った。
夜が消えた。
正確には、太陽が沈んでいるのに暗くならなくなった。
時刻はもう22時を過ぎる頃だというのに、この街は真昼の様に明るい。
空がそんな状態だから、月は、もう何日も真昼にたまに見えるあの薄ぼんやりと青白い姿のまま浮かんでいる。
それがこの街だけで起きている異常な現象だと言うことは、こちら側とを隔てるモヤのような曖昧な境界線の向こうの隣街に今まで通り訪