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『似た者同士』

登場人物

小西真那実  二十一歳。女。彼氏の裕樹と喧嘩中。
本橋裕樹   二十三歳。男。彼女の真那実と喧嘩中。

佐藤菜穂  真那実の友達。
木崎亮太  裕樹の友達。
河野翔   裕樹の友達。


1. 金沢駅・鼓門下

電話をしている小西真那実。表情がどんどんこわばっていく。
スーツケースの取っ手を握りしめる真那実。

真那実 「え、待って。それ本気で言ってる??? 私もう駅着いちゃってるよ!?」

鼓門の反対側で電話をしている本橋裕樹。険しい表情。スーツケースに座る。

裕樹 「待て待てお前ら、状況が掴めん。俺もう駅着いてんだわ」

真那実の電話口から佐藤菜穂の声。

菜穂 『本気、ホントごめん!! でも私も行きたかった!』

真那実 「愚痴いっぱい聞いてくれるって言ったじゃん!! 21世紀美術館楽しみだねって!! 金沢おでん! 金箔ソフト〜〜〜!!!」

今にも泣きそうな顔の真那実。反対側では頭を掻く裕樹。
電話口から木崎亮太の声。

裕樹 「パーっと気晴らししようぜって言ったよな!?!? 久々飲み明かすんじゃなかったのかよ!!!」

亮太 『悪い悪いマジでごめん!! でもしょうがねえだろ!?翔も謝ってるしさ!な、翔!』

電話口から河野翔の声。

翔 『裕樹ごめん! 埋め合わせはする!』

亮太 『そういうことだからさ、な!』

裕樹 「どういうことだよ!」

菜穂 『また絶対行こ、ね!』

真那実 「またって、菜穂〜!」

亮太・菜穂 『じゃ、本当にごめんってことで!』

電話を切られる真那実、裕樹。唖然と立ち尽くす二人。

真那実・裕樹 「信じらんない/ねぇ!!!」

お互いの声が聞こえた気がして、目が合う二人。

真那実 「何でいるの!?」

裕樹 「こっちのセリフだよ!」

歩み寄る二人。

真那実 「いや私は…菜穂にドタキャンされて、って、裕樹に関係なくない? そもそも、全部裕樹のせいだし」

裕樹 「何だよ全部俺のせいって…待て真那実今、ドタキャンされたっつったか?」

真那実 「そうだけど? 悲しいから一々確認しないでよ」

裕樹 「(ため息をついて)仕組まれたな、これは」

真那実 「は?」

裕樹 「俺も、亮太と翔からたった今『来れない』って連絡あったんだよ。お前とおんなじ、ドタキャンされた」

真那実 「え、亮太先輩達? (ハッとして)…なるほど…」

裕樹 「全くアイツらは。お節介つーか何つーか」

真那実 「…金箔ソフト。」

裕樹 「え?」

真那実 「金沢おでん、21世紀美術館!祐樹達のことだから、きっと大して観光地調べたりとかしてないんでしょ。仕方ないから、付いてきてくれても良いけど」

祐樹 「全く可愛げのない…」

真那実 「愛想尽かした? そうだよね、私素直に謝れないし、すぐ拗ねるし怒るし、可愛くないよね。現に今も拗ねてる。自己分析完璧。さっきの、忘れて。私一人で観光して帰るから」

一息で話す真那実。祐樹に背を向ける。

真那実 「…浮気してる、なんて疑ってごめんね」

立ち去ろうとする真那実。呼び止める祐樹。

祐樹 「俺はカレーが食べてーなー、あと金沢城行きたい」

驚いたように振り向く真那実。

祐樹 「それから訂正。真那実はすぐ拗ねるし怒るし、素直じゃないけど、喧嘩したら絶対ちゃんと謝る。俺的には? むしろその素直じゃない感じが丁度良くて可愛い。どう? 真那実の分析完璧」

真那実、笑みを堪えて

真那実 「言うことはそれだけ?」

祐樹 「…俺もごめん!!やってないとはいえ、誤解を生んでしまったし、拗ねて疑い返した。反省してる」

真那実 「(笑顔が溢れる)良いよ、許す」

祐樹 「(同じく微笑んで)うし。じゃあ、仲直り記念の金沢旅行と行きますか!」

歩き出す二人。スーツケースを持っていない方の手を繋ぐ。真那実、笑い出して

祐樹 「どした?」

真那実 「いや、私達似た者同士だなーって思って」

祐樹 「(笑って)あ〜、確かに。わかる気がする」

真那実 「でしょ〜? あっ、(真那実が立ち止まる)ていうか待って、私菜穂にお礼しちゃいたい!」

祐樹 「だな。俺も、亮太達にLINE送るわ」

スマホを取り出し、メッセージを送る二人。

2. 菜穂の家

雑誌を読んでいる菜穂。机の上のスマホに通知がくる。
手に取って確認し、微笑む菜穂。

菜穂 「全く、あの二人は・・・」

3. 亮太の家

翔と亮太、テレビゲームをしている。横に置いたスマホに通知がくる。
横目で見て確認し、微笑む亮太に、翔は気づかない。

亮太 「似た者同士だよ」

4. 菜穂の家

菜穂の手とスマホ。裕樹から「THANK YOU」のスタンプ。

5. 亮太の家

 亮太の置かれたスマホ。真那実から「も〜亮くん!!ビックリしたんだけど!」




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