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フォッサマグナ鉄道紀行-糸魚川・静岡乗り鉄の旅
フォッサマグナ-大地溝帯は日本列島を東西に分ける地帯である。特にその西縁である糸魚川・静岡構造線は、通称糸静線とも呼ばれる大断層だ。12月のある晴れた休日、その糸魚川・静岡構造線に沿って南下する乗り鉄の旅に出てみた。
旅の始まりは上野駅である。
今では地平ホームに発着する列車は少なくなったけど、石川啄木の歌碑は、いつも旅立つ人たちの心をつかむ。
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乗車するのは上野6:34発北陸新幹線のはくたか551号だ。東海道新幹線でいうとひかり号に相当するような列車で、この列車は軽井沢から先、各駅に停車する。その10分ほど前に出るかがやき501号は糸魚川には停まらないのでこの列車が朝イチの糸魚川停車の列車となる。
上野駅を出て少しの間は雲が多かったが、北へ向かうにつれて晴れてきた。日光の男体山や、赤城山、榛名山など北関東の名峰たちもよく見えたが、圧巻は軽井沢前後で見られる浅間山だ。ちょうど沈もうとする満月も見ることができた。そして毎度この区間を通るたびに楽しみなのが上越妙高駅近くで見られるも妙高山。早くも雪化粧している。
山々を楽しんで、最後は高架越しに海を少しだけ見て、糸魚川に到着したのは8:43であった。
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ここから乗車するのは大糸線。
糸魚川から白馬、信濃大町を通って松本まで、ちょうど糸魚川・静岡構造線に沿って進む路線だ。糸魚川から南小谷までがJR西日本が運営する非電化路線。南小谷からはJR東日本が運営する電化路線で、東京から特急もやってくる。その性格は北と南で大きく異なっている。
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8:54出発の南小谷行まで、北陸新幹線はくたか号から接続すること10分少々しかない。糸魚川駅といえば2010年まで活躍したキハ52が展示されているが乗換時間が少なく見に行くことは断念。
現在の大糸線を走る軽快ディーゼルカーのキハ120の車内はそれなりの乗車率だが、見たところ、地元客はほぼいなそうで鉄道ファンと思しき人ばかりだった。この列車で南小谷まで行くのだが、正直言うと、車窓にあまり見どころはない。真冬の雪深い時期の方がきれいかも知れない。
この大糸線のJR西日本区間は輸送密度は何と55人/日。パンデミックによる減少はあろうが、相当厳しい数字だ。廃線の噂も聞こえているが、地元客の利用がほとんどなく、乗るのは鉄道ファンばかり。北アルプスが見えたり、只見線のように川を渡る風景が外国人旅行客に人気になるなどすればまだ活路は見出せそうだが、正直厳しいだろうというのが乗った感想だった。
途中、JR西日本名物の超低速走行区間もあって、たっぷり1時間かかって南小谷に到着した。
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南小谷から南はJR東日本の運行路線。現在は信濃大町で系統が分離されている。昼間の時間帯は2時間から3時間も列車が来ないなど、かなり運転本数も減少してきた。
信濃大町行はE127系。新潟地区からは引退したが、大糸線ではまだまだ活躍が続いている。この新長野色と呼ばれる塗色は、大糸線によく似合うさわやかなカラーリングだと思う。
10:10南小谷出発。ここでも乗車しているのは鉄道ファンや旅行者風と思しき人たちだったが、白馬からは大量の観光客が乗車して、車内は満員近くになった。この区間で存廃協議がされるという噂はまったく聞かないが、正直な印象としては、白馬から北はかなり厳しい気がする。
白馬の手前の信濃森上駅あたりから、北アルプスが車窓の友となる。まだまだ地上には雪はないが、それでも、白馬岳をはじめとする白馬三山は美しく雪化粧していた。
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白馬村と大町市の境にある佐野坂峠は日本海と太平洋の分水嶺になっている。列車はあえぐように坂を登り、やがてサミットを越えると見えてくるのが仁科三湖と呼ばれる湖だ。北から青木湖、中郷湖、木崎湖と続く。波穏やかで静かな湖たちだ。木崎湖では湖岸を走る区間もあって、実に心地よい車窓を拝むことができた。
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再び北アルプスの山々が見えてくると信濃大町駅に到着。ホームからも美しい北アルプスを拝むことができた。この信濃大町、立山黒部アルペンルートの入口だが、既に冬期運休期間に入ってしまった。
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ここで松本行の列車に乗り換える。車両は同じくE127系の2両編成だが、大量の観光客が乗っていて、車内はかなりの混雑だった。
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ここから松本までの区間は、もともとは信濃鉄道という私鉄が建設した路線で、それゆえか、各駅の駅間距離が短い。標高もだいぶ下がってきて、安曇野ののどかな田園風景が広がり始める。
途中の信濃常盤から安曇沓掛のあたりは、鹿島槍ヶ岳をはじめとする北アルプスと大糸線の車両を撮影できる昔からの撮影名所。最後尾の車両からその雄姿を見ることができた。
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信濃大町駅始発時点でかなりの乗車率だったが、松本に近づくにつれて乗車客はどんどん増えていき、松本到着時は立ち客も多く、かなりの乗車率。正直、2両編成の列車では輸送力が足りないくらいに見える。
松本到着は12:24。いつの間にかお昼を過ぎていたが、糸魚川を9時前に出て3時間半。長い時間をかけて大糸線を全線完乗した。
ここから糸魚川・静岡構造線は少し南東方向へと方向を変える。ちょうどそれに並行しているのが中央本線だ。ここからは中央本線に乗って再び旅を進めたい。
乗車するのは特急あずさ30号。新型車両E353系に乗車する。このE353系、カッコイイし、コンセントも全席についているし、言うことなしなのだが、誰かが「PS5にしか見えない」と言って以降、本当にそうとしか思えなくなってしまった。
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本当は松本駅前の食堂でお昼を食べたかったのだが、混雑していたので、持ち帰り用の弁当を買った。信州・松本といえば山賊焼きである。どでかい鶏の一枚肉を豪快に揚げたもので、このエリアに来るとどうしても食べたくなる。お腹いっぱい。美味しかった。
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13:10松本を発車。ここからの車窓の友は八ヶ岳だが、その前に、茅野駅を出てすぐの木落とし公園も見ることができた。御柱祭り、まだ観たことはないが、一度観てみたいと思っている。列車と絡めて撮ることもできるかも知れない。
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八ヶ岳は随所で見えていたが、いちばんきれいに撮れたのは小淵沢到着の直前、小海線の大築堤の辺りだっただろうか。
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甲府到着は14時過ぎ。師走ともなるとかなり日が短くなっており、この時間でも西日がきつく感じられるほど。
次の列車までは20分くらいしか乗換時間がないが、その短い乗換時間の間に見てみたかったのが、そう、駅前の武田信玄像。さすがの迫力だった。
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続いて乗車するのは身延線の特急ふじかわ10号。身延線にはずいぶんと昔に静岡側から乗ったような気もするが、ほとんど覚えていない。甲府から乗るのは初めて。特急「東海」としても走っていたJR東海の373系が身延線ホームに停車していた。
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今回はフォッサマグナの西縁である糸魚川・静岡構造線沿いに乗り鉄の旅をしているわけだが、実は糸魚川・静岡構造線は、甲府市の西の方から山沿いに入って、静岡側の安倍川流域に繋がっていく。ただ、その沿線には鉄道がなく、仕方がないので、この身延線で静岡へ抜けることにする。
この身延線も名峰を望む路線だ。甲府出発直後は南アルプスに、遠くに八ヶ岳。そして山が迫ってくると身延山があって、県境を越えるとついに富士山がその姿を現す。ちょうど日が沈む頃、見事な赤富士を車窓から見ることができた。
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身延線の終点・富士からはスイッチバックでうしろ向きに走って、特急ふじかわの終着、静岡に到着したのは17時前。ちょうど夕陽がきれいだった。
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糸魚川を9時前に出てから実に8時間。糸魚川・静岡構造線の南の端である静岡に到着した。静岡駅はデパートが併設する大きな駅舎。駅前には、徳川家康やその前に駿府を治めた今川義元の像もある。来年早々には新しい大河ドラマ「どうする家康」が始まる。静岡を訪れる人も多くなろう。
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そうそう、静岡駅といえば、もうひとつ見ておきたいものがあった。全国のプラモデル出荷量の8割を占めるという静岡市を盛り上げるプロジェクト「静岡市プラモデル計画」の一環として設置されたプラモデル型公衆電話だ。なるほど、これは面白い。
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静岡からは東海道新幹線で帰宅。新幹線ひかり号で帰路に着いた。静岡に停車するひかり号は1時間に1本しかないからだろうか、静岡ではかなりの人が降り、そしてかなりの人が乗った。
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こうして、早朝に上野を出て、糸魚川・静岡構造線に沿って南下し、静岡へと抜ける乗り鉄の旅は終わった。のんびりと鉄道に乗り続ける旅も、これまた面白い。
これまで行ってきた「鉄印帳の旅」が終わった今、またテーマを決めて、乗り鉄の旅に行ってみようと思う。
(掲載写真はすべて筆者撮影。なお旅程はマスクを常時着用するなど、感染対策に心がけております)