012 地球の健康は私の健康-長期思考-
2022.3.18発行
「プラネタリーヘルス」とは
2015年に世界的に権威のある科学誌「ランセット」によって世界に広がり、国際会議「ワールドヘルスサミット」でも発表された言葉だそうです。
その概念は、「人類と地球を一体と考え、人類の健康は、地球の健康とは切り離せない」というもの。
これからわたしたちが健康で生きていくために、とても重要な考え方です。
人も地球という大きな循環システムの中に組み込まれています。気候変動などのさまざまな環境問題は、わたしたちの健康に大きな影響を与えています。
気候の変化で収穫できる作物の種類や量が変化する、農薬や添加物など安心・安全にまつわる問題、現代病といわれるアレルギーなども、その一例です。
わたしたち一人一人が健康であるために、地球が不健康な状態、というのは成り立ちません。
環境負荷が低く土壌を汚染しない作物は、わたしたちにも負荷が低く、健康を害さない食べ物と捉えることが出来ます。これは、わたしたち消費者が何をどう選択するかにもかかわる事です。
環境改善、環境保護という目標は、遠い存在ではなく巡り巡って「自分の健康」という身近な目標に繋がっているわけです。
「短期思考」から「長期思考」へ
先日、「蛾 姿はかわる」 という絵本を読みました。
「うすい色の蛾」と「こい色の蛾」。産業革命期の環境変化とともに姿を変え、たくましく生きていく蛾たちの物語を通して、「進化」と「自然淘汰」について、わかりやすく知ることができます。
イギリス マンチェスターにいる「オオシモフリエダシャク」という蛾は、翅が白っぽく、止まっている木の幹の色に似ているため、鳥などの天敵から身を守ることが出来るが、遺伝子異常で発生した黒化型(こっかがた)の個体(こい色の蛾)は、白い幹では目立つため鳥などに捕食されていた。
ところが、産業革命期に煤煙などの汚染により多くの木が黒くなったため、うすい色の蛾は多くの天敵に捕食され、逆にこい色の蛾は黒い翅が保護色となり、数を増やした。1850年ごろからたった70年で95%近くがこい色の蛾になってしまった。
その後、公害が少なくなり木の色が元の白色に戻ってきた時、今度は逆の現象が起き、またうすい色の蛾が増えた。
また、日本での政治施策に次のような例があります。
1550年~1750年にかけて、国の支配者は、森を切り開いて何千もの城や神社、邸宅を建てた。森林が大量に伐採されたため洪水に襲われ、その結果1600年以降は大飢饉が相次いだ。日本の森林は荒廃し、生態系も社会も崩壊する寸前となった。
これに対して、徳川家は、1760年から100年間、世界初の大規模な林業計画に着手した。役人は村人に報酬を払い年間10万本の苗木を植えさせた。
この結果、1度は文明衰退の道をたどった日本が19世紀後半には再び緑の国に戻る事ができた。
これらは、生命のたくましさとともに、私たちが環境危機に対処するために、どう長期計画をたてればよいかという希望のモデルだと言えます。
これまでのように「自分だけの健康・幸せを考えればいい」という時代は終わり、これからは「プラネタリーヘルス」の概念、「自分の健康・幸せのためにも、人類と地球を一体と考える」時代となり、考え方は「短期思考」から「長期思考」を重視することが大切になっていくのでしょう。
善き苗を種える
「願わくは一切の道俗 一時(いちじ)の世事を止めて 永劫の善苗(ぜんみょう)を種(う)えよ」
(心が枯渇してガサガサしてしまった日常に潤いを戻す為には、一時でも雑務を止めて、心を調えなおし、将来の自分の為になる善き苗を種えなさい)
このような言葉があります。
苗を種えても今すぐには役に立たないかもしれない。しかし、ここに種えた苗が必ず将来には成長し、収穫物が将来の自分を助ける糧となる、そのような苗を種え育てる事が大切だ、という事です。
将来を見据えて、資格習得の勉強をしたり、語学を身に付けたり、または健康寿命延伸の為に運動をしたり、など、今すぐ対応しなくても問題は起きませんが、長期的な視野で見ると、とても重要な意味を持ちます。
心を調え、自分にとっての「善苗」を種えているだろうか?と振り返ることも、大切な時間だと思います。
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