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法生会

 9月になると筥崎宮で放生会が毎年ある。大学時代は試験があるので、なかなか縁遠いお祭りであったが、1度だけクラブの同級生の仲間といった記憶がある。大学1年生の頃である。今から40年ほど前になる。
 長い参道に夜店露天が並び、香具師が威勢よく声を出している。見世物小屋があったので、興味をそそったが、一緒に来ていた憧れの女の子に「そういうところに行ってはいけません」といわれ、断念したが、今日まで見世物小屋なるものに入ったことがないので、未だ少々後悔している。もっとも差別問題とかもあり、見世物小屋は今やっているところってないのではないだろうか。あってもチャチなインチキしか今はできないだろう。
 金魚掬いをした。僕が最高に金魚を掬い、自慢げにいると、友人のI
君が「そういうことにしか才能を発揮できない人っているよね」と確か当時流行った「めぞん一刻」という高橋瑠璃子先生の漫画の一節を喋った。言葉は間違っているかもしれないけれど、そういうニュアンスだった。
「そんなに金魚とってどうするん」と友人のS君がいった。
 確かに。アパートで飼うつもりはない。結局通りすがりの小学生の女の子にあげてしまった。相手は多分喜んだと思うが、こっちは厄介払いができてホッとした。
 東京ケーキという屋台があって、興味をそそったが、皆が先を行くので、買わずに通り過ぎた。ただのベビーカステラのことだった。なんで東京ケーキというのか不思議に思ったので、ググってみたけど、よくわからなかった。愛媛が発祥の地という説もあるが、それも怪しいような気がする。何でもハイカラなものは東京をつければ売れると踏んだのだろう。
 大学入って最初の試験がそれからすぐに始まった。結果は人それぞれであったが、僕は沈没寸前で救助されたレベルで、やっぱり朝起きれなくて授業に出れなかったドイツ語はあかんかった。Aは基督教学だけであった。別にクリスチャンじゃないけれど。次の年から法生会はもう行くことはなかった。
 

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