雑草(ショートショート)
ふと家の庭を眺めてみれば、思いのほか雑草が生い茂っていた。これは次の休みの日には雑草刈をせねばなるまい。
一軒家はこれだから大変だ。マンションのほうがよかった。「庭付きの家に住みたい」と妻がいうので、一軒家にしたのだが、家が出来て住みだした途端に妻は消えてしまった。
今では一人で住んでいる。いっそこんな手間がかかるなら売っ払ってしまおうか。そのほうがスッキリするというものだ。
今度の休みに不動産屋に診てもらおう。そのためには印象をよくするために、やっぱり先に雑草の処理が先だろうな。
そういう訳で、休みの土曜日に、鎌と土嚢袋を持って、俺は雑草刈をした。まあ随分あったものだ。土嚢袋がパンパンになった。作業を終えた後のビールのうまいこと。生きてるって感じがする。
早速俺は調べていた不動産屋に電話した。すぐに来てくれるらしい。2本目のビールを飲んだ。
不動産屋が来るまでにバルコニーの掃き出し窓から庭をみていると、小人が数人遊んでいた。
俺は窓を開け、小人たちの様子を窺った。小人たちは俺に気付いたらしく、みんなちりじりに隠れてしまった。
何だったのだろうか、今のは。
不動産屋が来た。愛想よく名刺を渡され、とりあえず家の中を見てもらった。居間に通した。するとそこにまた小人たちが遊んでいた。今度は俺が来ても逃げなかった。不動産屋には見えないらしい。さっきは分からなかったが、全部で7人いた。居間で方々遊んでやがる。俺は無視して、不動産屋と話を進めていった。
やがて一通り見回り、やがて不動産屋は帰っていった。
玄関で不動産屋を見送った後、居間に戻ると、小人たちは逃げずにまだいた。そのうちの数人が寄ってきていった。
「ねえ、この家、売っちゃうの」
「ああそのつもりだが。何かまずいことでもあるのかな」
俺は小人たちに聞いた。
「奥さんはどうするの」
奥さん?どうする?
「何か妻についてしっているのか」
俺は叫んだ。
「何言ってんだい、自分で殺して庭に埋めたくせに」
そうだった。妻は俺が殺してこの家の庭に埋めたのだった。忘れていた。俺にはそういう障害があった。
不動産屋には気が変わった旨を伝えて断った。
俺は一生この家から離れられない。
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