「国家はなぜ衰退するのか」を読んで、今の日本に当てはめて考えてみると。
荒川防火水槽研究会と申します。ダロン・アセモグル/ジェイムス・A・ロビンソン「 #国家はなぜ衰退するのか 」という本を読んで、今の日本について色々考えたことを書きます。
この本は、経済的繁栄を享受する国がある一方で、そうした繁栄を全く享受できない国があるのはなぜか、を解き明かしていく本です。論旨は次の2点に集約されます。
1 収奪的"政治'制度を持つ国は、その制度で利益を享受する階層が、自らの利益を守るために収奪的"経済"制度を作る。
2 その経済制度が、創造的破壊を伴う経済のイノベーションを阻害することで、国が衰退する。
本書の中では日本も取り上げられています。 #明治維新 によって、それまでの武士階級の支配による収奪的制度がより包括的制度に置き換わり、産業革命の技術を受容し経済的な発展を遂げることができた国、とポジティブな評価を受けています。
しかし、今の日本の経済の現状を見ると、収奪的とは言わないまでも制度の歪みがあり、これが日本の衰退の要因になっているのではないかとの危機感を感じます。
では、今の日本において昔の武士に当たる層はどの階層でしょうか。それは「戦後の #高度成長 から #バブル にいたる時代の利益を享受した階層」であると思います。具体的には以下の階層です。
・企業の経営者および正社員(OBまたは50歳以上の世代とその家族)
・そうした階層の意に沿う方向に各種制度を強化して来た公務員・マスコミ・司法制度に携わる人(検察・裁判官・弁護士)・政党(公明党や立憲民主党)
こうした層は「バブルの崩壊」という歴史の変化の局面に際し、採用制限と解雇規制で #ギルド に近い組織を作ると同時に、自らに有利な年金制度や税制(低い消費税と高い社会保険料)、デフレ政策を支持しました。その結果、ギルドに入れない階層との格差が発生しましたが、こうした行動自体は、彼ら自らの利益を守るには非常に合理的な行動です。
冒頭の書では、包括的な経済制度を持つ国では、利益を独占しようとする階層に対して、創造的破壊をもたらす #イノベーション により、多元的な社会ができると言います。では日本でこの武士の階層にチャレンジする階層があるとしたら、どんなことが起こるでしょうか。
・「選挙制度をめぐる争い」が起きると考えます。政治は選挙を通じてしか実現できませんので、チャレンジする階層は、より投票率が高まり、死票が減る制度を求めることになります。「紙による投票」をいつまで続けるかは、この文脈から注目です。
・また「司法制度をめぐる争い」も予想されます。特に日本の法解釈は、既存の法意識を維持する思考が強すぎるので、新技術を抑圧するような法解釈が往々にして行われます。ホリエモンやWinny開発者など。司法試験制度が崩壊状態のため、既存の法制度が今後弱体化するのは避けられない中、日本の法体系がどうなって行くかも注目です。
今の日本が、冒頭の書の指摘する"国家の衰退するパターン"に当てはまっている懸念が強いので、選挙制度や司法制度がより良い方向に改善されることを強く願います。