「体験を2.5ドルで売る」という体験
なぜか思い出した、昔アメリカで駐在していた時の話です。
日本人会のファンドレイジングのため、イベントで物販をしました。うちの子も「お店屋さんができる」と店番をしたがったので、一緒に店番をしていると、中学生位の女の子が来店します。
手に20ドル札を握りしめて、2.5ドルくらいの、日本のアニメキャラクターが書かれた商品を手にしています。「これが欲しいんだけど、このお札をどうしたらいいの?私にはわからない」みたいなことを言ってる。
私の #英語力 がないから彼女が言ってることが理解できないのだと思い、アメリカに長年在住している人にヘルプを求めましたが、彼女も結局理解できない。
そんなやりとりをしてたら、あることに気がつきました。
「この方は、"売買"という概念がわからないんだ」
売買とは何かがわからなければ、お札をどうしていいかわからないはず。そこで私は彼女に売買のプロセスを説明しました。「このお札は私がもらう。代わりにこの商品をあなたにあげる。でもお釣りがあるからちょっと待って。」
うちの子からお釣りを受け取って彼女に渡すと、商品をもらったのに、お金まで受け取る理由が理解できず戸惑っていましたが、商品とお釣りを受け取ると、うれしそうに誰かに向かって走って行きました。
たぶん、あれは彼女の学校の特別クラスの先生だったと推測しています。先生が、売買とは何かがわからない彼女に、物を買うという体験をチャレンジさせたのだと思います。
だとすると、私が彼女に2.5ドルで販売したのは、「物を買う」という”体験”でした。この商売が成立する前提として、①私には彼女の #顧客インサイト と #ニーズ を理解する必要があった。そして②買いに来ている人が売買の概念を知らないことがあり得るという想像力も必要だった。
偶然だけど、それらの条件が揃って売買が成立しました。「体験を2.5ドルで売る」という体験の話。
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