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16の思いも天にのぼる⑤大輔(2)
学校が終わり、さすがに放課後はいつものメンツが自分の所に来るかなと期待していたが、誰も来なかった。
大輔は平気な顔をして、教室を後にした。
ぉっと流れ行く雲を見ながら下校していると、女子の怒鳴り声が聞こえてきた。
声をする方を見ると、彼女とクラスメイトの女子が話していた。
その後ろに身体を小さくして、昔いじめていた女子がいる。
その様子を見ていると、いじめていた子が大泣きし始めた。
大輔は心配になり近づこうとしたが、足が鉛のように重く、結局一歩も踏み出せなかった。
家に帰ると疲れがどっと出た。
「こんな時はテレビだよな」
バックを放り投げると、テレビを点けた。
テレビを見ながらバカ笑いをしていると、不思議と涙が流れてきた。
「あれ、おっかしいな。どうしたんだろう」
大輔は、その涙の理由を理解することが出来なかった。
期待を少しはしていたが、友だちが自分の元へ来なかったのは、当たり前のような気もしていて、案外平気だった。
友だちと言っても、悪口を言い合うだけの仲だったし、前々から友だちと言う言い方にも違和感があった。
今日来なかったのは、辛いどころか逆に清々しい気分だった。
だから何故涙が出てくるのか、皆目見当もつかなかった。
大輔はテレビを消し、やや早い時間だったが、お風呂に入りすぐにベッドに入った。
そのまま深い眠りについた。
翌日学校へ行き、広の机を見る日課の行動をとると、机の上に花が置かれていた。
(そうだ。湯本は死んだんだ。だから、俺がイライラすることはなくなったんだ。だから広の机を毎日確認しなくていいんだ)
大輔は思った。
授業中何度も綺麗に咲いている花を見ては、心の中で自分でもよく分からない感情が湧きでていた。
ただ学校がとても退屈で、つまらなくなった。
家に帰ると、落ち着かなかったので久しぶりに鞄の整理をした。すると、ちょっとしわが付いた一枚の紙が出てきた。
(湯本に書く手紙か……。俺なんて書けばいいんだろう。死んで喜んでごめんなさいとか。いやいや、可笑しいだろ)
自分で突っ込んで、薄笑いを浮かべた。
それから大輔は、急に真剣な顔になり紙をじっと見つめた。
するとまた、涙が溢れてきた。
(何なんだよ。湯本が死んで俺、喜んだはずなのに、何で涙が出てくるんだよ)
広のいない教室で、広の席に花が置かれている様子が、頭をよぎった。
(湯本、死んだんだ。もう、憎まれ口も叩けないんだ。俺、最期に何て言ったっけ)
だんだんと、大輔の中で広の死が現実味をおびてきた。
(俺、人が死んだのに喜んでいた。最低だ。俺にとっては嫌なやつだったけど、もうこの世にいないってことなんだよな)
大輔は、悲しみと罪悪感に襲われた。
どうしていいか分からず、今の気持ちを広へぶつけることにした。