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16の思いも天にのぼる⑤大輔(4)
何もせず長い時間外を眺めていると、通夜から帰ってくる級友達がちらほら見えた。みんな目を赤くして、歩いている。
大輔は、やっぱり参加した方が良かったかなと後悔した。
でも、自分で決めたことだし、今更式へ行くこともできなかった。
級友達を見ながら、大輔は広との出会いを思い出していた。
小学生の休み時間のことだった。
すごい剣幕で、大輔のクラスに入ってきた男子がいた。
それが広だった。
「おいっ。相沢さん泣かせたのは誰だよ」
大輔は、その剣幕に一瞬たじろいだが、自分より小さな広を見て、勝利を感じた。
「俺だけど、何か文句あんのかよ」
大輔は意気込んで言った。
「男が女を泣かすなんて良くないことだぞ。すぐに、謝ってこい」
広も負けずに、大声で言った。
「うるせぇ。俺の勝手だろ」
そう言って大輔は、広の肩を軽く叩いた。
「謝れ」
広は負けじと、更に大声で叫んだ。
「うるせぇ。お前に関係ないだろ」
「人が泣いているのをほっとけるわけないだろ」
広は、頑として譲らない。
関係ない広に、入られて頭にきた大輔は、仲間数人で、広をぶん殴った。
そこで広の闘争心に火が付き、殴り合いのケンカになった。
広は小さいくせに力があり、五分と五分といった戦いだった。
しかし、それを見ていた生徒が先生を呼びに行き、ケンカは途中で止められた。
駆け付けた先生に両者が怒られ、ケンカは終わった。
その後、先生がケンカの理由を聞き、大輔たちに、
「泣かせた女子に誤って来なさい」
と命を下した。
しぶしぶ、大輔たちは、勝ち誇った顔をした広の後に続き、ジャングルジムで泣いていた女子に謝りに行った。
(あの時からだよな。湯本との因縁は。まぁ、湯本は、俺が悪口を言っても相手にもしてなかったけど。今考えると、俺1人バカみたいで、ガキだったな)
沈む夕日を見つめながら、大輔は物思いにふけった。
(結局、俺はあのケンカを未だに引きずって、嫌っているだけなんだよな。湯本は、あれからも変わらず、正義感あふれているけど、ガキの正義感とは違ったものだった。それに対して俺の反発はガキの反発で、小学生のころから何ら成長していなかったんだ。って、今頃気づいても遅いけど。これから成長できるかな俺。それに、あいつ見たいに、素直に気持ちぶつけられる人間になれるのかな)
通夜の次の日、クラスに行くと、何で来なかったんだという目で見られているような気がした。
(結局人の目ばっかり気にしているんだな、俺)
大輔は、自分を自分でせせら笑った。
(俺が欲しいもの、湯本が持っていたから八つ当たりしていたんだよな。湯本なら、もし通夜に出なくても堂々と次の日学校に来るだろうな。俺、変われるかな)
広の机を見つめながら大輔は、思った。
大輔が、広の机を眺めていると、クラスのお節介な女子たちが因縁をつけてきた。
「何で通夜に来なかったのよ。嫌いなのは分かっていたけど、薄情な人ね」
「うるせぇ。全員参加何て決まりなかっただろ」
本当は、通夜に参加しなかったことが、後ろめたかった大輔は、思わず声を荒げた。
女子たちは、怖がりそれ以上何も言ってこなかった。
大輔は、声を荒げた後、
(本当に変われるのかな)
と後悔をしていた。