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両目洞窟人間
2021年10月11日 00:37
『失われたタンゴが聞こえてきたので』 失われたタンゴが聞こえてきたので、私は通りを右に曲がった。 軒先でレコードを七輪で炙っている女性がいた。レコードがはぜる音が失われたタンゴのメロディを奏でていた。 女性は団扇を扇ぐと、七輪の火は強くなった。 レコードはますます焼かれ、失われたタンゴは失った音色を取り戻していった。「すいません。なんのレコードを焼いているのですか?」と私は言った。「