2023年 新聞歌壇に掲載いただいた短歌
こんにちは。奥山いずみです。
社会人をしながら、短歌を趣味でつくっていて、新聞歌壇に投稿しています。
今年の締めくくりに、自分用の記録もかねて新聞歌壇で掲載いただいた短歌をまとめておきたいと思います。
東京歌壇 東直子選
2月26日
つぶされたトマトの呻き声のよう遠くで回転するチェーンソー
4月16日
丹念に湯葉をはがして食べながらあなたは話す終わった恋を
4月30日
骨折ののち捨てられたビニ傘が閉じたすがたで受ける春雨
6月25日
取り壊す日を待つビルの輪郭は夕陽をうけてわずかふくらむ
8月13日
するめいかマイバッグからちら見せのわたしの今宵とてもうつくし
(個人的にこれ載せてもらえるんだ?!って驚いたうちの一首)
10月1日 二席
太陽がうまく見えないこの部屋でわたしたちだけの神話を記す
11月5日
ふくふくと祖母はくらげに似ていって水へととけるようなほほえみ
11月26日
くやしいな たくたくたくたく白菜を透き通るまで煮込む霜月
12月24日 一席
はつゆきを待つひとの目できみは言う体外受精の成功率を
東京歌壇 佐佐木幸綱選
1月15日
顔色をうかがいながら笑ってる鞄のファーの繊い毛羽立ち
1月29日
シーグラスおはじきのようにぶつけ合うとおくに海を感じる町で
3月5日
こんなにも犬にたくさん慕われて泡雪のようなセーターの人
4月30日 一席
あんなにもたくさん黄色 春の花みたいな教習所の車たち
5月28日 一席
解像度粗めの会話がここちよいぬるいビールをのぼりゆく泡
6月11日
しくしくと咲く紫陽花の道の先クロワッサンのお店が開く
7月9日
梅の実の追熟薫る実家にて両手両足ほどけてゆけり
8月6日
記憶より地元の川は寡黙にて盛夏の河川敷を歩みぬ
毎日歌壇 水原紫苑選
1月30日
意味のあるものは中身がぱんぱんのクッションみたい背中に当てる
2月14日
食べ方がいつもきれいなきみといて骨あるものは骨だけになる
3月6日
だんだんと視力が落ちるわたくしに夕映えはまた窓を染め抜く
3月27日
ジュラルミン 春がわたしにとけこんで見境もなく寿いでゆく
5月16日 二席
あのひとは感情を燃やすことが好き芒がゆれるようにわらって
(二席をいただいたにも関わらず、投稿時に名前をまちがえたのか、「奥村いずみ」の名前で掲載いただきました。涙)
6月13日
こんなにも心を晒すあなたから名のない白い花がこぼれる
8月15日 二席
ぞろぞろと花火のあとの人の列どの心臓にも残響やどり
8月21日
遊覧船 ひとつの愛を終わらせたあなたが川のきらめきを言う
9月4日
南極や宇宙に行ったひとたちも踏み込んではだめ心とは杜
9月25日 一席
ねむるって決めてから寝る 亀がいる わたしはきっと海をしている
10月2日 二席
ゆっくりと樫の木になるあなたから懺悔のように木の実はこぼれ
11月27日
肩が鳴る かっくりかっくり肩が鳴りそのたびかるくゆれるたましい
12月12日
違った、と硬く伝えて検査薬ごみ箱にふかくふかく棄てたり
(掲載時は「違った、 と」と、一字アキが入っていました。投稿時は上記のスタイルだったはず。)
毎日歌壇 加藤治郎選
2月27日
頭痛薬はんぶんのんで目をつむる半端な希望は痛くてにがい
毎日歌壇 伊藤一彦選
2月6日 二席
ながされる草舟のような日々のなか空の容器に砂糖をみたす
(伊藤一彦さんの選で初掲載。投稿から約2週間で掲載されるスピード感に驚きました)
2月27日
霧雨に輪郭線をうばはれてふやふやなままふたりであるく
(投稿時は、「うばわれて」でした。旧かなになったことでふやふや感増しましたね)
3月14日
息をするたび重くなる感情を銀のスプーンで掬いとる朝
4月18日
怒ってもいいのに怒らない人がまぶしくないよう影をつくりぬ
5月1日
警報でぶれた日常とりもどすため大鍋でゆでる新じゃが
6月26日
さみしいと呪文のように唱え終えマルゲリータの円をわけあう
7月17日
首もとに冷たいボトルあてがって影のないような昼をたたずむ
7月31日 一席
夏の夜は真っ暗闇にならなくて炎症のような隣町の灯
9月25日 二席
雨音が耳の底にはのこってるもういないひとがいたときの音
まとめてみると、「あ、ここの欄にはこういうペースでこういう歌が載せていただけてたんだな」と振り返りになってよいですね。
来年はもっともっといい歌がつくれるといいな。
ということで、みなさまよいお年をお迎えください(*^-^*)