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ロマンだよ 人類は月面に降り立ったか?
憶測大好き
これは何となくといった印象だけれど、英米人は推理が好きな気がする。推理というより憶測好きというべきか。実際にあった出来事を「真相は裏で○○が…」と動機から手段まで解説していく。
一つの事件に複数の説。「う~ん、なるほど」と唸ってしまうものから壮大なファンタジーまで、各説ともいたって真面目。元々ゲーム感覚で勝敗つきの討論をする人達だ。
反論を並べて、どちらの方が説得力があるかとか、どの説があり得そうかを順にランク付けてみたり、楽しみ方はいろいろある。
で、この推理、辿るとこまで辿っていくと何故か二つの名前がでてくる。これぞ本当のミステリー。この二つ、方向は大きく違うんだけれど、絡んでくるとすっとんだ展開になっていく点は共通。その二つとは「宇宙人」と「CIA」。
CIA
今回宇宙人は置いといて、CIA。なかなかのやり手だよ。噂を信じるなら、元妃も大統領もジョン・レノンも彼を襲った人も、モンローもボブ・マーリーもカート・コバーンも CIA に消されたことになっている。おお、大活躍。ジュリアス・シーザーですら CIA に殺られたんじゃないかってな勢いだ。
その CIA のうしろで糸を引いているのはもちろん米政府。人気者だぜーぃ。
CIA がこうまで人気なのは、米政府に対する不信感の現れなんだという話を聞いたことがある。世界の警察を自称する大国、その力を認めつつ裏で絶対何かやっていると世界的に思われてるからだとか。
その象徴が CIA で、実際テレビでも映画でも、ヒーローから強敵まで無難にこなす欠かせない人達になっている。
アポロの月面着陸
戻る。数ある噂の中の一つに、アポロの月面着陸がある。実は人類はまだ月面に着陸していなくて、あれはすべてスタジオ製の映像だというもの。何だい今さらこんな話を、と思う人もいるかもしれんけど、好きなんだよね、これ。
冷戦時代の当時、宇宙開発ではソ連の方が進んでいた。盟主としてプライド高いアメリカは遅れを取り戻すだけでなく、突き放すぐらい先に行かなければならなかった。しかもそれを世界に見せつけなければならない。そこで挙がってきたのが人類月面着陸。
技術的には夢のまた夢、証拠も必要だし、何より行ったと思い込ませなければならない。んで大博打。自国の得意分野、映像を駆使して月面やそこからの様子、歩く姿などを国の威信をかけ極秘で作らせた…という内容。ハリウッドではなくネバダの、もちろんエリア51製ですよ。
アポロ打ち上げより先に公開された「2001年宇宙の旅」との類似、持ち返った石の成分、酔った勢いでラスベガスで口を滑らせてしまった男、月面歩行で見える吊り紐、空気のない宇宙ではためく国旗など、例によって数々の「証拠」が挙がっている。
専門家とやらの談話もある。「宇宙からこの角度で何を見ると光はこう当たるのでこれはありえない、作られた映像で着陸はウソ」とか。ただの凡人の私にゃ、確認しようにも叶いそうにないやね。
ソ連のどことかの研究者の談話とやらも読んだぞ。
「通常の使い捨てマシンのように多少の損傷を気にせず、また送りっぱなしにするのならできるが、乗っている人を傷つけず着陸させるのは難しい、しかも無事帰還させるのは技術的に不可能、発射させるのができなくてね、やれるもんならサッサとやってるわ」 とライバル言い。
お約束のように個人名はなかった気がしたなあ。
ワクワクするんだよね。夢があっていいじゃない。本当に小説の世界だと思うんだよ。これがもし現実だったらと考えると…映像作りに携わった人達のドラマを想うと、それだけで楽しくなってくる。
世界中の人を騙すのだ!しかも何年も騙し続けることのできる映像でなければならない。決して評価されることのない仕事。バレないということが最大の評価。大声で叫びたくても口に出せない秘密。裏からのとんでもないプレッシャー。
職人としちゃ、自分の意地と誇りをかけて取り掛かるんだろう。際限なく妄想が広がっていく。や、でも、このネタで映画を作っても十分通じる題材だと思うんだよね。
NASAの反論
面白いのはこの話、他の噂と比べ、反論者が少ないように見えるところ。くだらんとハナから相手にしないのか、私のような夢見る大人が多いのか。
ユーモアを交えつつ真面目に反論しているところを知っている。NASA の子供向けサイト。科学的なことに興味を持てるよう、取っつきにくいことも分かりやすく解説している教育サイトで、この「小話」を行ってきた証拠とともに解説している。
出だしで騒動の発端となった人達へ 「まったくあの番組、余計なことを!おかげで問い合わせが多くてねぇ…」 と、ちょっぴりグチってるようにみえるのがかわいらしい。
でも。でも、なのだよ。読んでても映画説の方がよっぽど説得力があんだな。
NASA は子供達に語りかける。「まだまだ根拠はあるんだぜ!」てな具合に自信満々。ほほう何じゃと期待して読み進めたら「ほうら見てくれ、これが決定的証拠さあ!」とばかりに切り札。勝ち誇ったようにババ~ンと書き記されていたのは
「みんな誠実で信じるに値する男達なんだ (引用&翻訳)」
ほのぼのしてて非常にいい回答だ。「月を歩いた12人の内9人はまだ生きている」とも記してあったが、CIA に消されてないってか?いや、生きてるから行ってきたお爺ちゃん達に直接聞いてごらんってことなんだろうけどさ。
あ、人数は2001 年の時点ね。ほぼ同じ内容で、この部分が違う表記になってるページもアップされてるよ。
ワクワク
主張者達は「人類が月に降りたのはアメリカによる一度きり。各国参加して宇宙にどんどん人を送り出すこの時代、これだけ技術の進んだ現代でも月に再び人類が降りることがないのは何故だろう」と問いかける。
これに対し NASA がこう答えたとか答えないとか。「必要ないからできるけどやらないだけだよ。研究用標本は回収してきてるし、それより他にいろいろ調べることがあるんだよね」。本当にワクワクさせてくれるんだな、この話。
初出2005年10月
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