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吉井理人『最高のコーチは教えない』良かったで

昨日の紹介した本で、子供の教育に親がいかにかかわることについてやや恐怖を感じた。

男が勝負に出るときはけっして負けてはならないので、ついついお節介になったり感情的になったりしがちである。

そもそも高学年の小学生にここまで介入する必要があるのかってこともあるが、ついついコーチングの本とか手にとってしまったのである。

ちなみに今日の時点でKindle unlimitedだったし、Audibleも聴き放題でカバーされている。

著者の吉井理人さんは元プロ野球選手で、パイオニアの野茂英雄氏に続いて渡米し、MLBでもかなり活躍されていた。野茂さんほどではないけど、私にとってはHeroである。

引退後コーチに転身してからは、ダルビッシュ有選手や大谷翔平選手を指導したことで名伯楽の名をほしいままにしている。

最近では佐々木朗希投手だろうか。


本の内容はわりと普通のコーチングなんだけど、吉井氏の現役時代を知っているので入り込みやすい。

また筑波大学大学院でスポーツ心理学も学んでおられるので説得力もある。

驚いたのは、特に高卒ルーキーでは野球の基本ができていない者が多いことだ。プロなのだからアスリートとしては超エリートなのに。

そういう選手にはコーチングというよりも、積極的に介入していくようだ。

ある程度できている選手には、おせっかい焼かずに自分で考えるようにヒントを与えるにとどめる。考えることを促すことで、良かったこと悪かったことを言語化できるようになる。
言語化することで、自分のイメージと実際の投球動作が一致するようになるとのことだ。

そして渡米前のダルビッシュ投手くらいになると、もうなにも言うことはなくて、観察しているだけになるという。イメージと言語化と実際が完璧に一致しているのはダルビッシュ投手とデニス・サファテ投手くらいだったとのこと。

イメージと言語化という点では、身体よりも身体の外側に意識を向けることが大事だと書いてある。これは多くの人が指摘するところである。


本書のいいところは吉井さんが素直に心情を吐露していることだ。その最たるものは、自分の不適切なアドバイスで野球人生をだめにしてしまった若手についての後悔だろう。

また自分で気づかせるためにあれこれ指摘しないとは言っても、待っている間に結果を出せなければクビになってしまうのがプロスポーツの世界である。吉井さんのような名コーチでも悩みながらやっているのだ。

すぐに結果を求められる世界でなくとも悩ましいくてついつい口出ししたくなるけど、コーチが24/7で見ていられるわけじゃないし、自分で問題を発見して課題を設定する能力は死活的に重要である。

また次のコーチが吉井さんのような名コーチとは限らないし、引退後の第二の人生のほうが長い。自分で修正していく能力はどうしたって必要になる。

他には、コーチは監督と選手の間に立って「通訳」することも求められる。要は中間管理職だ。
中間管理職の私は、中間管理職も大事だよねと思いつつ読み終えたのであった。

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はむっち@ケンブリッジ英検
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