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菅野昭正編『村上春樹の読みかた』

なんとなく図書館で借りた本。このての解説書みたいなのは掃いて捨てるほどあるんだろうけど、まあ面白かった。

編者の菅野氏はフランスでの受容について解説。『1Q84』はめちゃくちゃ売れてるらしい。


石原千秋さんは、夏目漱石と対比して村上春樹の日本での普及について解説している。
漱石が売れだしたのは昭和に入ってからで、大学生が増えた時期と一致している。このころのエリートは恋愛のしかたもわかってなかったから、漱石の登場人物たちの不器用さが受けたらしい。
村上春樹の初期の作品は1970年頃が舞台で、爆発的にヒットしたのはバブル期である。このころに大学進学率が急上昇している。昭和初期とちがって、このころは庶民も大学に進むようになる。暇な彼らはとりあえずセックスするしかない。だから村上春樹のキャラクター達はやたらとセックスするのかもしれない。

三浦雅士氏は言葉の永遠性というか超越性について語っている。村上春樹はそのことに自覚的だから、過去と現在が回転扉のようにつながっているらしい。なるほどね。

藤井省三氏は中国語圏での受容について解説。これも面白かった。
日本で高度成長が落ち着いたバブル期に売れだしたが、中国語圏も同様であるらしい。だからまず台湾や香港でヒットし、次いで上海、内陸部と普及していく。
さらに翻訳家とか、村上チルドレンといわれる作家らも紹介されている。


というような内容の本であった。知らなくてもいいようなことがほとんどだが、少しだけ人生が豊かになったような気がした。

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はむっち@ケンブリッジ英検
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