United States of Japan 読んだよ
United States of Japan、略してUSJ読み終わった。おもろかった。
私はケチなので原書を購入した。
著者のピーター・トライアスは韓国系アメリカ人で、日本の映画やアニメにも造詣が深く、日本版ネビュラ賞の星雲賞もたびたび受賞しているそうだが、本作品には悪い意味での東洋趣味が横溢している。アメリカ人が喜びそうな日本描写が満載だ。オリエンタリズムとすら呼べないほど低俗である。まあそのへんは狙ってやってるんだと思うし、嫌いじゃない。
舞台は第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、両国が北米を支配している世界である。西海岸は日本の占領下にあり、メカと呼ばれる巨大なロボットが闊歩する。『高い城の男』と『パシフィック・リム』を足して2で割ったような感じだと誰でも思うだろう。
冒頭では、まだ戦争の帰趨が決する前に日系アメリカ人が強制収容所に入れられて虐待されるところから始まる。アメリカが自由の国などではないという描写である。それは現代を生きる我々もよく知っていることであるが、大日本帝国の支配のもとではそういう幻想を抱くものもいるわけである。
日本が勝利した分岐点は松岡洋右の北進論が採用されところで、我々の住んでいる世界ではポイント・オブ・ノー・リターンとなった南部仏印進駐がされなかったという設定である。ノモンハンでの敗戦は関東軍の独断専行がいけなかったのであって、戦力的にソ連に劣っていたわけではないことになっている。まあどうでもよいことであるが。
ストーリーはゲームの検閲官石村と特高の槻野のバディものといった感じ。USJのレジスタンスへの弾圧、市民の虐殺について捜査しているうちにややこしいことに巻き込まれていく。石村が関わっていたUSAなんとかっていう反乱分子の間で流行するゲームは、アメリカが第二次大戦に勝利したという設定で、このへんも『高い城の男』っぽいんだよね。
『パシフィック・リム』のように巨大ロボが大暴れするシーンは少ないけどいちおうある。人間やロボットの動作の英語は、私のようにかたい英語ばっかり読んできた人間にはけっこう難しくて勉強になった。
とはいえ主たる部分は石村と槻野の捜査や掛け合いである。石村は軽薄なギーク、槻野は堅物の特高というわかりやすいキャラ設定なので会話の流れはつかみやすく、英語で苦労することはあんまりなかった。『高い城の男』原作みたいな複雑なキャラ造形だとけっこうしんどいのだが。
そういうわけなので形式上は、アマゾンプライム版の『高い城の男』に近いかな。
これけっこう面白いです。すでに完結しているのでBinge watchingにいいと思われます。
そんでUSJの話に戻ると、SFというよりはミステリー仕立てになっていて、より悪趣味になったブレードランナーってとこだろう。ロボットはおまけだね。
ちなみにこれは三部作の一作目であり、続編ではロボットが大活躍するらしい。
この中二心をくすぐるタイトルめちゃいいよね。
サイバー・ショーグン・レボリューション!
メカ・サムライ・エンパイア!
声に出して読みたいカタカナ英語だ。
続編もぜひ読まないといけないと決意を新たにしたのであった。