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悪文批判:ストロングZEROは危険ドラッグとして規制対象とすべき云々。

 Twitterのタイムライン上に、「ストロングZEROは危険ドラッグとして規制対象とすべきだ」とする主張が流れてきた。悪文の典型例であったため、引用し、問題点を指摘する。(なお、Facebookの元記事を参照したところ、Twitterで画像として出回っているものとはやや文章が変更されていた。以下は2020年1月2日 11時に確認した最新版である。)

 ストロングZEROは「危険ドラッグ」として規制した方がよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあります。私の臨床経験では、500mlを3本飲むと自分を失って暴れる人が少なくありません。大抵の違法薬物でさえも、使用者はここまで乱れません。
 結局あれは「お酒」というよりも、単に人工甘味料を加えたエチルアルコール=薬物なのです。そして、ジュースのような飲みやすさのせいで、ふだんお酒を飲まない人や、「自分は飲めない」と思い込んでいる人でもグイグイいけます。そうした人たちが、ビールの倍近い濃度のアルコールをビール並みかそれ以上の早いペースで摂取すればどうなるのか。ただでさえ人類最古にして最悪の薬物といわれているアルコールですが、その害を最大限に引き出す危険な摂取法です。
 お酒はお酒らしい味をしているべきであり、公衆衛生的アプローチを考えれば、本来、酒税は含有されるアルコール度数の上昇に伴って傾斜すべきです。それなのに、「税収ありき」の国の二転三転する方針にメーカーが追い詰められて、確実におかしな事態を引き起こしています。
(https://www.facebook.com/matsumoto.toshihiko/posts/2647659768647332)

 この文章にはさまざまな問題がある。では、ひとつずつ指摘していこう。

 この医師の方は、『私の臨床経験では、500mlを3本飲むと自分を失って暴れる人が少なくありません。』と言う。しかし、「臨床」すなわち「病人を治療・診察する現場」(主として病院)で「暴れる人をよく見かける」というのは妙である。病院で患者がストロングZEROを飲み始めることはよくあるのか。しかも暴れるほどに飲むのか。いやストロングZEROに限らない。そもそも病院で酒を飲みだす人がたくさんいるとは考えにくい。おそらくこの解釈は違うだろう。2通りの解釈がある。

 まず、『臨床経験』の言は正しいとよう。ならば、先の文は「私の臨床経験では、ストロングゼロの500ml缶を3本以上飲んで、暴れたあげくに救急搬送されてきた人が少なくありません。」と書くべきである。(『500mlを3本』という表現も単位がおかしいため直した。「500mlを3本」または「1500ml」である。)
 次に、「臨床経験」ではなく、飲み会でそういう人を見かけてきたという私生活を含む経験を広く指していたとしよう。ならば、「臨床」の字は除き、単に「私の経験では、……」と書くべきである。

 『そうした人たち(※お酒に弱い人たち)が、ビールの倍近い濃度のアルコールをビール並みかそれ以上の早いペースで摂取すればどうなるのか。』の文にも疑問がある。「ビールの倍近い濃度のアルコール」と言うが、「アルコール」自体に濃度の濃い・薄いはない。「アルコール」はヒドロキシ基(-OH基)をもつ化学物質の総称である。正しくは「ビールの倍近い濃度のアルコール飲料」だろう。
 または単に「お酒」でもいいのだが、この記述の前でストロングZEROを指して「お酒ではなく薬物である」と筆者独自の――正直、お酒はもともと薬物の一種なのだから違和感のある――分類をしているため、そうは書けなくなっている。

 さらに筆者は続けて『ただでさえ人類最古にして最悪の薬物といわれているアルコールですが、その害を最大限に引き出す危険な摂取法です。』と書いている。これも妙である。問題なのは『摂取法』なのか。であれば、本記事の目的は、読者に対し「飲みやすいアルコール飲料では、飲むペースに十分気をつけなさい」という訓示を与えることになる。しかし、それなら何もストロングZEROに限った話ではない。たとえば一部のカクテルにも成立する話である。『ストロングZEROは危険ドラッグとして規制した方がよい』と冒頭に書かれれば、読者は「他の酒類にはない、ストロングZERO特有の危険性」が述べられると期待する。筆者は読者の期待を受けて、たとえば「ストロングZEROは、アルコールの害を最大限に引き出す危険な飲料です。」と書くべきではなかったか。こう書かねば、「ストロングZERO」という問題に焦点が合わなくなる。

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