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オクトパストラベラーの映像を考察する【月イチスイッチ批評。2018年7月期 】

このコーナーはニンテンドースイッチソフトを毎月レビューする自腹企画である。

2018年7月は何と言ってもコレ。『オクトパストラベラー』。
『ロックマンXアニバーサリーコレクション1+2』も買ったので、ここらで名作ゲームについても語りたいのは山々なのだが、何せスイッチの期待作だということもあり、こちらにした。

今回は素晴らしくよくできたこのゲームについて、すこし趣向を変えて、批評に加えて素晴らしさを探っていきたい。


◼︎何なの?オクトパストラベラーとは

さまざまなところでこのゲームの素晴らしさのつぶやきやネット記事を目にするが、この記事は「まず」のところから解説していくのが伝統である。 しばしお付き合いを。

『オクトパストラベラー』がどんなゲームかという大前提だが、「RPG」というゲームの王道ジャンルに属していて、“ファイナルファンタジー”とか“ドラゴンクエスト”みたいなものと思っておくといい。
つまり、「旅をして敵と遭遇、戦って経験値ためてレベルアップ!強くなってボスを倒して次の街へGO!」
みたいな繰り返しをしていくもんだ(だいたい)。 「RPG」についてはゲームに興味がなくても分かるだろうが、今回紹介する『オクトパストラベラー』も、もれなく、もちろん、というか西洋の中世をイメージした王道すぎるくらいの王道のRPGという感じで、戦闘システムや冒険にワクワクさせられる。(シナリオについては後ほど)

でもきっとぱっと見で分かるこの作品の1番のウリは、【グラフィック】。これがまぁとにかく綺麗。
今回語りたいことは、この【グラフィック】に色々と詰まっているのである。
しかしとりあえず言いたいこととしては、ドラクエやFFがなんとなく分かれば、コレも遊べるよ。ということ。大事かも、意外にこういう情報。


◼︎飽きない映像力

映像だとこの水の表現がすごく綺麗で、本物のような動きをしている。ドットで描かれた木々も風でゆらめいている、昔見たことのあるようなドットたちが生き生きとしている不思議な世界だ。

昔ながらのドット絵のキャラクターとマップ、3Dで表現された背景たち。
このゲームでは全編において、手前や奥にあるものがピンボケするという、数年前にも一時期流行した「チルトシフト(ティルトシフト)撮影」の手法が使われている。
ゲームでは……少なくともRPGではこれをドット絵と合わせて使うのは初めてだろう
という感じ。 それをHD-2Dと名付けちゃったりしてるよ。

チルトシフト写真の例。チルトシフトというのは元々はレンズのことで、それを使って逆チルトという撮り方で撮影することで、このようなミニチュアを撮影したかのような写真になる。

で、このゲーム画面を改めて見ると、よくできている…飽きないなー。
なぜかこのゲーム、スクリーンショットは撮れるのに、映像撮影はできなくなっている(※ニンテンドースイッチは、ソフトによって映像撮影・スクリーンショットOKの部分が決められている)のだろうか…映像にするとこの画面の数倍綺麗なのに……私は理解に苦しみます……(買えってことか)。

ということで、イメージはYouTubeの公式動画をどうぞ。こんな感じ。

この撮影手法って、パッと見た目のインパクトもあるんですが、当然ながらこのチルトシフトを採用した意味はそれだけじゃないのですよ。きっと。


◼︎物語とチルトシフト・HD-2D

シナリオの話がここでやっと。
このオクトパストラベラーは、主人公が8人いて、それぞれが出会い、仲間になっていくのだが(途中出会う8人全員を仲間にするかどうかは自由)、それぞれのキャラクターにはそれぞれの物語が存在しており、オムニバス形式のような形で進行していく。

そして、そのシナリオが非常に暗い。 ダーク、ダーク、ダークネス。

男性が女性たちをはべらかす、いかがわしい状況だというのが、ドットでもわかるだろう。

「仲間が突然裏切って惨殺して逃亡したので探している」とか、「娼婦になって父の仇を討つ機会を待ってる」とか、主人公の目的も状況もかなりダークなものが多い。

そんな中でドラクエのような「主人公=ユーザー」となる演出だったらどうだろうか?……めちゃくちゃツライ。 ツライ出来事に遭いまくるのに耐えられないかもしれない。

しかし、そのツラさを緩和するのが、「チルトシフト」効果、「ミニチュアのように見える」ということだと考える。
これにより、シナリオの惨劇が人形劇のようにも見えて、一歩引いて見ることができるのである。

そしてテキストが映えてくる。
一歩引いたところから、物語をまるで“のぞき込んでいる”ような感覚で楽しむことができるのだ。

8人というキャラの多さからも、いちいち全員に感情移入していくよりも、それぞれの物語を“のぞき込む”という方が感覚的にも入りやすい。
製作スタッフがそこまで考えていたのかどうかは分からないが、チルトシフト、結構すごい役割だと思っている

主人公たちとの出会いの場面と章仕立ての物語前後には、あらすじのようなものが出る。

◼︎リアリティーと古き良き

製作スタッフとしては、やはりこちらの方を考えて作っていたのではないだろうか。

「古き良き」は、スーパーファミコンなどの往年のゲームを彷彿とさせるドット絵のことである。
“ファイナルファンタジー”や“ドラゴンクエスト”を作っている会社でもあるので、ノウハウはバッチリ。昔ながらの操作感や表現が非常に上手い。

「リアリティー」は、チルトシフトなどのリアルな表現を指す。
画面を見てもらうと丸わかりだが、チルトシフトで奥行き感が演出され、ドット絵の街の中に太陽の光が射し、雪が舞う。いずれもスーパーファミコンでは出来なかったリアルな表現だ。

▲巨大なボス敵と戦う主人公たち。頭身が敵味方(とボス)で違うのは昔ながらのお約束、か。

これらのどちらのウケもよくなるように。
とそんな簡単な理由で作ったわけではないだろう。

おそらくだが、**こんな理由かもしれない。 **

ソニーがプレステの性能アップでリアルを求めていく中で、ニンテンドーは性能を求めずアイディア勝負。それが時代を逆行しているようにも見える昨今。
しかしこのゲーム、私にはあえてニンテンドーハードでおこなう「ドット絵の世界の中で、リアルを求める人への挑戦・アンチテーゼ」という風にも捉えられた。
“何が本物のリアルか” “何をもって楽しいと言えるのか”
そんなことを思わせる、絶妙なグラフィックだ。

◼︎ちゃんとした批評

【グラフィック】について語りすぎたのだが、これは批評記事であった。
批評記事として最後に色々まとめを。

・戦闘システム
戦闘システム面は非常にやりごたえがある。
弱点となる武器や魔法が出会った敵の下に常に表示されているのだが、初めて出会う敵は「?」マークになっている。「短剣」や「雷属性攻撃」などで実際に攻撃してみて弱点が当たると「?」がめくれて弱点だと分かる。
これが面白く、ためしに炎で焼いてみたり、長剣で突いてみたりしながら敵の弱点を探っていく楽しみがある。

同じく敵についている盾マークの数字の数だけ弱点攻撃をすると、BREAK(ブレイク)が起きる。
そうすると敵はしばらく攻撃ができなくなる。
弱点をつきまくれば、相手にはほとんど攻撃するチャンスを与えずに戦うことができるというわけだ。

その後は、弱点をつきながら、いかに効率よく倒せるかを考える戦いになってくる。
このゲームの難点は戦闘が長いことだが、考え方を切り替え、**どうやったら楽に倒せるだろう。などと戦略を練るゲームと思うようにした方がいい。
というかそれが楽しい。 **

・音楽
これ、音楽素晴らしい。だから動画撮りたいっていうのに、なぜこのソフトは動画が撮影できないのだ…(以下同文)
何がすごいかというと、飽きない。口ずさめるメロディ。というところ。
これもドラクエFFのノウハウなのだろうが、音楽は飽きがこないのが一番いい。そのためには、口ずさめるようなメロディがちょうどいい。
もちろん世界観にすごく合っているというのもあるし、音楽に詳しくないので色々あると思うが、戦闘音楽なんかは特に繰り返し流れるので、重要なところがしっかり抑えられてるな、と感じるのである。(上から目線)

◼︎批評の批

批評っていうからには悪かった?ところをあげていこうか。無くはないんだよ。ワガママかもしれないが。

まず、やはり戦闘が実時間として長いので(フィールドの敵に10分程度かかることも…)、腰を据えて遊ぶ必要があるんだなぁ。ここが最高に昔ながらの家庭用っぽいところでもあるが。

そして、イベント中の声優さんの声が低かったりBGMにかき消されたりして聞き取りづらいので、これから始める方は最初の方に設定で音量調整するといいかもです。
フルボイスではなく、特定のイベントだけ声が出る。っていうのも注意。ふつうに読み飛ばして聞き逃す可能性があるのだ。フルボイスイベントとノーマルイベントの差が分かりづらく、その差は出してほしかったかも。(フルボイスイベントはメニュー画面から振り返ることができるが、見直すのはだいぶ気に入った人くらいだろうし)

とまぁ、あるにはあるけど、楽しみ方の違いだろうという程度。
戦闘なんかは、一時間以上じっくりやるには、ちょうどいい難易度とかレベルの上がり方。いいぞー。

◼︎総括

さぁ、総括。
一見すると王道のRPGであるが、工夫が随所に見られ、メインクエストだけでなくサブクエストも充実しているという、イマドキの異質なRPGであった。
主人公たちのもつフィールドコマンドのおかげで“盗み”や“誘惑”をして村人と絡めたり、どの町も飽きないグラフィックと音楽が盛り立て、その中でシナリオが太い骨組みをもつ。

筆者はまだジョブチェンジができるというところにようやくたどり着いたばかりだが、そんなことで、私にはまだまだ終わりは見えない。楽しみがまだまだ残っている。


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