空の条件
人差し指を突き立ててみせる。どんよりした曇り空。指の先を、わたしは見据える。何人かがわたしの指し示す方向に視線をむけた。それを盗み見て、わたしはほくそ笑む。
そこにはどんよりした曇り空がある。炎上する飛行機とか、地球侵略を企てたエイリアンとか、そんなものはなくて、ただ空がある。重たい雲がある。わたしたちがうまれるずっとまえから、当たり前のようにそこにある。なぜそこにあるのだろう。空は、あるのだろうか。疑うことをしらない。
空が落ちてくることはなさそうだ。きっと。20年いきてきたが、空は一度たりとも落ちてはこない。わたしは、おちていた。年を重ねていくたびに落としていった。大切なもの。ちいさくなった。
空は当たり前すぎるから、ぼくらはその説明を試みようともしない。空を語れるひとはどこにいますか。
空は色をかえる。空中は空なの?空中を、ぼくらは生み出せる。ピッチャーの手から放たれたボールは、キャッチャーミットに収まるまでの間、空中にいる。密閉された空間と空。東京ドームに空はある?
空がないのに空がみえる。