お願いしますという
いま、外に出るにはマスクが必要だと、着用を促す彼は、皆が口にする食べ物を扱う際、手を洗っていない。
至る所に置かれるようになったアルコールや除菌ジェル。いろんなヒトが同じポンプを押す。なぜそれを持参しようとしないのか。出先の感染予防対策に頼っている。ほんとうに怖いのなら、危険とおもっているのなら、あらゆる感染経路を絶とうと努めるはずだ。
一席ずつ間隔を空けるようになったが、みな同じキーボードを叩き、同じマウスを滑らせている。
あの透明の壁はどうだろう。逐一拭いたり取り替えたりしているのだろうか。拭く場合に使った雑巾などの処理はどうしているのか。
マスクだって。
感染経験のある著名人に喋ってもらって、どれほど危険なものなのか知らしめる。
後ろ指を指されたくなくて、除け者にされたくなくて、考えず、ただ従う。静かに歩調をあわせて安心している。みんながしているから。