幼少期
県庁のある自然豊かな住宅街。二階建てのおおきな家の二階に、わたしたちは暮らしていた。一階にも誰かしらが住んでいたが、幼児のわたしには詳しくはわからなかった。
プラスチックでできた小さなジャングルジムのうえで、人差し指を突き上げながら踊る。カラオケセット。けむくじゃらのあし。煙。
寝室にはブラウン管テレビがあり、枕に頭を預けた状態でも快適にみることができた。ベッドの右側にはおおきな収納がある。中は青っぽく、人を隠すには打ってつけの場所だった。
青いプラスチックのドームは、隣家の男の子とベイブレードで遊ぶときに使っていた。
近所に噴水公園があり、虫網の似合う広い林があった。小川はキラキラと銀色の水面を揺らしている。
和菓子屋におつかいに行ったこと、夜のKFCで何かを食べたこと。
アリが行列をつくって、廊下を通り過ぎてゆくところ。
姉は母のことが好きだったみたい。それでも母のことを選ばなかった。
彼らは全部間違えながらやってきたんじゃないか。そう思えてならない。