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【IW100/2024①前菜】奈良の「発酵の可能性」を体験する3品のイタリア料理 

2024年11月の1ヶ月間、全国100店のイタリアンレストランで同時開催される「ITALIAN WEEK 100」(IW100)
開催2回目となる今年の全店舗共通テーマは「発酵の可能性」

テーマに基づいた100人のシェフによる100通りのお料理が全国津々浦々で楽しめる夢の1ヶ月、お近くのレストランからご旅行先まで、シェフそれぞれの個性溢れる「日本のイタリア料理界の今」を体験してみてください!

リストランテ ボルゴ・コニシは3品の「奈良の発酵の可能性」を発表いたします。


サブテーマは「木」

発酵を通して奈良と日本の食文化をイタリア料理にすることで、両国の伝統食に新たな視点と価値観が生まれることを私自身が体感しました。
料理を通して多くの皆さまに私の感動をお伝えできればと思います。
そしてIW100を始まりとして末永く皆さまにご愛顧いただけるメニューになれば幸いです。

奈良の歴史や文化から「発酵の可能性」を表現するにあたり、原始的で科学的要素が介入し辛い「木」をイメージして自然の完全性を表した3品の料理を用意しました。

前菜「椎茸のフリット 奈良の森林の香り」
吉野葛の酵母による発酵でフードツーリズム体験

「椎茸のフリット 奈良の森林の香り」

椎茸のフリットで表したかった奈良の神聖な山を歩く体験

春日山原始林や三輪山から山の辺の道を歩き、大和橘の畑から眺める2000年変わらぬ風景を眺めると清々しく神聖な気持ちになり、心身ともに軽やかになります。そのような山道を散策しているかのような料理を作りたいと思いました。

2018.4.2 山の辺の道 大和橘の植樹
なら橘プロジェクトの城さん(写真左)と植樹指導 中尾さん(写真中央)と

奈良盆地は社寺、古墳、御陵が点在しており、それらの境内や地域内の自然林が共に保護されています。また奈良公園、若草山、春日山原始林が都市に近接する世界的にみても貴重な場所です。

昔から青垣山と称される奈良盆地の山陵地帯は、自然林が点状または帯状に連なり、奈良盆地の田園風景及びそこに散在する数多くの文化遺産と一体となって素晴しい歴史的自然環境を形成しており、観梅で有名な月ヶ瀬、山頂部にツツジが咲きほこる神野山や葛城山、紅葉の美しい多武峰(とうのみね)など四季折々に変化を見せる周辺部の自然とともに、都市住民の身近な自然地域として貴重な存在であるばかりか、日本人の心のふるさととして重要な位置を占めています。

奈良県ホームページ「奈良県の自然」

そして奈良盆地を囲む山々。
特に高山部の自然林地帯を中心とする南部吉野山地は、素晴らしい山岳風景とさまざまな動植物が生きる豊かな自然が身近にある有数の自然地域です。

これらの自然林を守ることは、海に面していない奈良県が海を汚さないことにもつながります。

「麴」と「葛乳酸菌」が作るおからの新たな魅力の発見

椎茸の美味しさを引き立たせる食材は何だろう?
行きついた先は、常々なんとかしたいと思いながらできなかった「おから」でした。

大豆王国と言っても過言ではない日本で、大豆にお世話になればなるほど全国各地で出てくる副産物「おから」
栄養価が高いにも関わらず、腐敗しやすいため大半が産業廃棄物となってしまいます。

中でも奈良在来種「大和大鉄砲大豆」のおからは、以前から折々挑戦しては挫折を繰り返してきました。

「麴」と「葛乳酸菌」が発酵によりおからをイタリア料理にしてくれることに気付きました。

前菜「椎茸のフリット 奈良の森林の香り」

奈良の山道を歩くという体験型フードツーリズムを、酒造りの発酵工程からヒントを得て奈良特有酵母を使った発酵により表現しました。
古来からの様々な発酵を経た上で生まれた「奈良の新しい発酵の可能性」のご紹介です。

秋の奈良はきのこが美味しい、中でも肉厚の椎茸はたっぷりと山の水を蓄えています。
麴で糖化させた「大和大鉄砲大豆」のおからに「葛乳酸菌」を加え乳酸発酵させて椎茸に詰めました。湿度を帯びた森林の香りを閉じ込めています。
フリットの衣は大和橘の花の酵母で作ったパン酵母。南イタリアの郷土料理「ピットレ」のイメージです。

栄養豊富にも関わらず腐敗しやすいため流通せず廃棄されてしまうおからを、「麴」と「葛乳酸菌」は有用な発酵により新たな食材に見事変貌させました。

おからを糖化させる「はしへいの麴」イゲタ醬油井上本店

おからを乳酸発酵させるために糖化させます。
塩麴で使い慣れている「はしへいの麴」を使いました。

自家用の醤油はイゲタ醤油と認識していたのですが、改めて味噌はどこだろうとみてみると「五徳味噌」も「白味噌 万葉小町」もイゲタ醤油。
初めて店頭で見つけて以来用途により使っている「大鉄砲白味噌」は、三木食品と思っていましたがイゲタ醤油!
イゲタ醤油のHPを改めて見て気付いた「はしへいの麴」もイゲタ醤油!!

調味料は食材と同様、もしくはそれ以上に重要です。
原材料と味わいから選びますが、これで良しとひとつひとつ家の常備調味料として集めたものは、全てイゲタ醤油でした。

それらが発酵食品であることさえ忘れて、なんとぼんやりしているのかと思わず笑ってしまいました。
それほど自然に根付いた発酵食品に恵まれている日本に、生産者に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

そして、このお料理が完成した時には思ってもみなかった、あり得ないと信じて疑わなかった醤油とイタリア料理を融合させるに至ります。
この後の記事『奈良の「発酵の可能性」を体験する3品のイタリア料理②プリモピアット』にてご紹介いいたします。

糖化させたおからを発酵させる酵母菌「葛乳酸菌」吉野本葛天極堂

「葛乳酸菌」は吉野本葛天極堂の研究開発により、葛の花から採取した酵母から培養されて生まれました。

この酵母は豆乳を乳酸発酵させるという素晴らしい発見です。
天極堂が推奨している葛乳酸菌と豆乳を混ぜて作る「豆乳ヨーグルト」はそのままでも美味しく、私は調味料としても使っています。

牛乳ではなく豆乳を乳酸発酵させる植物性ヨーグルトは野菜料理に最適で、自然でおだやかな酸味が素材を覆い隠すことなく馴染みます。

おからと豆乳は「大和大鉄砲大豆」三木食品

奈良在来種「大和大鉄砲大豆」は、伝統と革新を大切にした大豆加工食品製造会社三木食品の当代 近藤正洋氏の熱意と、長年農業に携わったが故の専門知識と技術で近藤さんの熱意に答える田原本町鎌田ファーム 鎌田さんの名コンビにより、2017年に復活しました。

2020.10.7 鎌田ファーム大和大鉄砲大豆の畑にて
近藤さん(写真左)と鎌田さん

大豆の花言葉「可能性は無限大」

現在、豆腐のみならず豆乳、醤油、味噌、きな粉などの日本の伝統食を中心に、イゲタ醬油など奈良の志を同じくする専門業者と連携しながら様々に商品化されています。
いずれも大和大鉄砲大豆のシルキーで濃密、まろやかなコクが味わえる逸品揃いです。

三木食品さんのおからは県内産の牛の飼料となり、その牛のフンは牧場に隣接する堆肥場で発酵させ堆肥になり、地元農家さんの畑の土となり、野菜へと生まれ変わっています。
地域内における信頼関係のもと自然に始まった「無理のない」好循環は20年もの間続いているそうです。

2020年10月、三木食品 近藤さんと鎌田ファーム主催の大和大鉄砲大豆の収穫祭と、2021年6月の播種体験に参加させていただきました。

2020.10.7 大和大鉄砲大豆 収穫祭にて

播種体験に参加されていた天極堂のスタッフの方から「葛乳酸菌」のことを教えていただいて以来、気になっていた宿題がやっと終わったような気分です。
近藤さん、鎌田さん、天極堂さん、大変長らくお待たせいたしました。

しかもこのような形で発表することができて大変嬉しいです。
ITALIAN WEEK 100「発酵の可能性」がなければ気付けなかったかもしれません。参加させていただき心より感謝申し上げます。

2021.6.9 鎌田ファーム大和大鉄砲大豆の畑で鎌田さんと

天極堂と三木食品&鎌田ファームの伝統と革新から生まれた前菜「椎茸のフリット 奈良の森林の香り」

サクッとした食感と椎茸から溢れる山の香りは、落ち葉を踏みしめ山道を歩く感覚を想起させます。
えごまと松の実は落下した木の実を、仕上げの深吉野のヨモギは山の葉の香りを呼び覚まし、大和橘の高貴な香りは山の精霊を思わせる、奈良の奥深い神聖な山をまた再び訪れたくなる一皿です。

奈良の山の香りを食体験からも思い出に。

監修 山嵜正樹 
文 山嵜愛子

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IW100「発酵の可能性」関連記事
https://note.com/borgokonishi/n/n8af41e2d3943

より詳しい各社HPをご覧ください
イゲタ醬油井上本店
吉野本葛天極堂「葛乳酸菌」
大和大鉄砲大豆について 
 *三木食品オンラインショップでは豆乳ヨーグルトのスターターキットが購入できます。
 *おからは業務用のみで小売り販売はございません
大和橘について



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