イングランド・サウスゲート監督はなぜ"塩試合"を製造するのか? 本国の評価とともに
EURO2024の舞台は、ついに準決勝へと突入していきます。7月7日(日本時間)に準々決勝の全日程が終わり、スペイン、フランス、イングランド、オランダという強豪国が名を連ねる中、特にイングランド代表は興味深い状況にあります。
指揮を執るガレス・サウスゲート監督には、その戦術に対して厳しい視線が注がれています。彼の率いるチームが見せる低得点の試合展開は、しばしば"塩試合"と評され、議論の的となっています。今回はそのようなサウスゲート監督について見ていきましょう。
サウスゲート監督とは
生い立ち
ガレス・サウスゲート監督は1970年9月3日にイギリスのワトフォードで生まれました。彼はスポーツを愛する家庭で育ち、幼い頃から特にサッカーに情熱を注いでいました。サウスゲートの早期の教育は、パウンドヒル・ジュニア・スクールおよびヘーゼルウィック・スクールで行われ、ここで彼はサッカーの技術だけでなく、リーダーシップの基礎も学びました。
サウスゲートのサッカーキャリアは、クリスタル・パレスFCでのプロデビューで本格的にスタートしました。選手としてのキャリアはアストン・ビラFCなどにも及び、イングランド国代表としても活躍。現役引退後はコーチングに転じ、その管理スキルと戦術的洞察力で、2016年からはイングランド国代表の監督を務めています。
イングランド代表監督として
ガレス・サウスゲートは2016年にイングランド代表の監督に就任し、そのリーダーシップと戦術でチームをワールドカップ2018の準決勝、EURO2020の決勝へと導きました。彼のキャリアは、選手としての経験に裏打ちされたもので、特に指導者としての哲学は「エンパワーメント」と「共感」を重視しています。
サウスゲートは選手たちに責任感を持たせ、自分たちの役割やチーム内でのプレースタイルについて意見を持つことを奨励しています。彼は選手一人ひとりとのポジティブな関係を築くことで、チーム全体がより強くなると信じており、個々の選手が自立して決断できる環境を重視しています。
また、サウスゲートのコーチングアプローチには、選手たちが自分たちのパフォーマンスについて主体的に考え、チームの戦略に積極的に関与することが求められます。彼はフォーマルなミーティングだけでなく、非公式の対話を通じて選手たちとコミュニケーションを取ることを好み、それによって選手たちがよりオープンに意見を述べやすい環境を作り出しています。
ロースコアゲームの傾向
EURO2024において、サウスゲートはしばしばロースコアゲームを演出していると批判されることがあります。この傾向は、過去の指揮においても見られ、例えば、2018年ワールドカップの準決勝やEURO2020の決勝では、守備的な戦術が際立ちました。そのように、サウスゲート監督の戦術は、ロースコアゲームを生み出すことが多いです。その理由は主に守備的な戦術と慎重なプレースタイルにあります。
サウスゲートの守備戦術の特徴
守備的なフォーメーション:
主に4-2-3-1や4-3-3のフォーメーションを使用し、試合中はしばしば4-1-4-1にシフトします。このようなフォーメーションは、中央での守備を強固にし、相手の攻撃を抑制します。
フォーメーションをコンパクトに保つことで、相手の攻撃のスペースを制限し、ゴール前での守備を固めます。
ミッドブロックとゾーンディフェンス:
サウスゲートはミッドブロックでのゾーンディフェンスを好みます。これは、プレイヤーが相手の動きに対して組織的に対応し、守備ラインを保ちながら相手の攻撃を遅らせる戦術です。
この戦術により、エネルギーを節約し、後半に攻撃力を発揮できるようにします。
攻撃への慎重な移行:
攻撃に転じる際も、慎重なビルドアップを重視し、安全なパスを繋ぎながら前進します。このため、攻撃のテンポが遅くなり、相手に守備を整える時間を与えてしまうことがあります。
カウンターアタックの活用:
守備から攻撃への切り替えの際には、カウンターアタックを活用します。特に速いウィングプレイヤーを使って、相手の守備が整っていない状況で得点を狙います。
そのような批判もある中、スイスをPK戦の末撃破した準々決勝後には、イングランド本国でも様々な評価が行われました。
イングランド本国での評価
好意的な評価
サウスゲート監督の戦術的な洞察力が光り、試合への適応能力が勝利に直結しました。これは彼のリーダーシップと戦術的な柔軟性がチームの士気を高め、効果的なゲームプランの変更が勝利に貢献したと評価されています。
経験と知識がチームに安心感をもたらし、戦術的な決断が試合の重要な局面で効果を発揮しました。このことがチームの自信を向上させ、一致団結させたとされています。
スイスの攻撃的な脅威を効果的に無力化した戦術セットアップが評価されています。その防御戦略とタイミングの良い交代が、プレッシャーの下でチームを集中させ、結束力を保つのに寄与したとされています。
批判的な評価
サウスゲート監督の戦術が保守的すぎると非難されています。特に重要な試合でリスクを取らず、守備的な戦術に頼りすぎることが問題視されています。アグレッシブな戦術への転換が遅く、攻撃のバリエーションが不足していると批判されています。
事前に立てた計画が失敗し、スター選手が繰り返しパフォーマンスを発揮できていないにもかかわらず、代役を使わないことが問題とされています。ジュード・ベリンガムに過度に依存している点も批判されています。
サウスゲート監督の守備的な戦術がチームの攻撃力を制約していると指摘。特に、選手たちが創造的なプレーをする機会が少なく、試合の終盤での戦術変更が遅すぎることが問題とされています。
サウスゲート監督に対する批判の核心は、才能豊かなイングランド代表チームが、守りを固めた保守的な試合運びをしている点にあるのでしょう。ファンは、この圧倒的な才能を持つ選手たちが、それぞれの個性を発揮し、協調して多層的な攻撃を展開し、敵を圧倒する様子を見たいと望んでいます。しかし、長年にわたりタイトルから遠ざかっている現実もまた無視できない事実です。
ここまで勝ち進んだイングランド。準決勝での次なる相手はオランダ、そしてもし決勝まで勝ち進んだらフランス×スペインの勝者と当たります。まさに"誤魔化しがきかない"強豪国に、サウスゲート監督はどのような戦略を展開し、どのような成果を残すのでしょうか。そしてその結果に対して、イングランド本国はどのように意味を見出し、評価をするのか。ますます大注目ですね。
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