元メルカリGroup CTO、元Googleソフトウェアエンジニア若狭氏がアドバイザーに就任/サステナビリティというやりがいを持ちながら、難解な設計と組織拡大フェーズの両方に挑む!(対談インタビュー)
元メルカリGroup CTO、元Googleソフトウェアエンジニアの若狭氏がbooost technologies(以下、当社またはbooost)のアドバイザーに就任しました。今回、当社でプロダクト開発を牽引するCTOの高塚と対談を行い、booostのプロダクトおよび開発チームの未来についてディスカッションしました。
~booost technologiesは「より持続可能でNET-ZEROな未来を実現する」をミッションに掲げ、大手企業等のTechnologyパートナーとして「booost Sustainability Cloud」を提供し、NET-ZERO、サステナビリティの推進をbooost(加速)させています。~
経歴について
― インターネットがビジネスのインフラに
若狭:
エンジニアとして社会人をスタートして、気づけば26年経ちました。インターネットがビジネスのインフラとして利用されるようになる歴史と自分の歩みが、なんとなくアラインしてきたように思っており、それは幸運なことだったなと感じています。
初めは富士通の研究所に就職し、スーパーコンピューターのためのライブラリやネットワークのインフラを作成する仕事をやっていました。クライアントは大学や教育機関、金融機関などが多く、今振り返るとそのころから、アカデミックなことよりはグローバルに社会を変えていく技術や事業に関わりたいという想いがありました。当時は、ハードウェアで売り上げを立てるのが基本で、サーバーの上で動くソフトウェアでいかに稼ぐかが課題になっているというビジネス形態でした。私はメーカー出身というキャリアにもあるように、今でも基本的にはハードウェアが好きで、ガジェットの上でどうソフトウェアを動かすかというところに興味があるのですが、当時アメリカでAmazonなどのインターネット上のサービスが少しずつ増えてきて、今までアカデミックなものであったインターネットがだんだんとビジネスの主戦場となってきたのを感じました。メーカー脳(笑)の私はそのころ、ソフトウェアサービスを主役にした事業が成り立つという実感が、あまり湧いていなかったというのが本音ですね。
それから、直近ではGoogle、LINE、メルカリなどソフトウェアの会社を経験しています。長年、外資の会社に勤めていた経験もありますし、ここ数年の業務で台湾、ベトナム、インドなどの開発チームのマネジメントや立ち上げなどに携わっており、グローバルな視点から開発チームの組織づくりを牽引してきました。
~何のために、何を作るのか~
高塚:
私はインターネットが普及しはじめた2000年頃、PCやインターネットの仕組みに興味を持ちました。中学生でしたが、よく朝までPCと向き合っていました(笑)
その頃からプログラミングに夢中になって、大学でも情報工学を専攻しました。はじめは新しい技術に触れたり、パズル的にデバッグを楽しむだけで満足だったのですが、次第に何のために何を作るかをよく考えるようになりました。使う人や社会に大きなインパクトを与えたくなったのです。
先輩がいたということもあってNTTデータに就職し、社会インフラのソフトウェア開発を経験しました。クライアントをリードしながら社会的に重要なソフトウェアを作ることが楽しくて、夢中になって働きました。一方で、受託開発が中心なので自由度の低さに息苦しさもありました。10年程勤めましたが、徐々にbooostを手伝うようになり、プロダクトが脱炭素だけではなくESG全般へ領域を広げる段階でジョインしました。
アドバイザー就任の背景
― 組織マネジメントの経験をスケールさせ、社会に価値を与える事業をサポート
高塚:
booost は現在、新たな組織拡大フェーズを迎えており、1年で開発チームを2~3倍にする計画です。ビジネスとして機会損失しないためにスピード感を持って組織を拡大する必要があるものの、事業の要となるチームの質を下げないことももちろん重要で、一筋縄ではいかないと思います。
そこで、若狭さんという大先輩に知恵をお借りしながら進めていきたいと思い、この度アドバイザリーをお願いしました。
若狭:
私はエンジニアですので、40歳を過ぎてもできるだけハンズオンでやっていきたいと思ってきたタイプです。人を評価したりコーチングしたりするマネジメントの役割はあまり好まないのですが、ここ6~7年で求められることが変わってきました。「やりたいこと」と「やれること」は違うという考えから、現在はエンジニアの気持ちや視点を持ちながらも、株主や経営の視点を理解したうえで、組織として成果を出すことに取り組んでいます。
インターネットやソフトウェアはあくまでインフラであり手段です。世の中に価値を提供する手段は様々ありますが、IT活用が当たり前となった現代において、企業がビジネスの場・手段としてのインターネットとソフトウェアを正しく理解し、使いこなすことができれば、事業としてやりたいことは加速できるはずなんですよね。私個人としては、昔は電話と紙とファックスを使っていた事業の場が新しいインフラにより変化しているところに強い関心があります。
このような前提があり、私がこれまで経験してきた開発組織のマネジメントや拡大に関しては、業種に縛られることなくある程度スケールがきくと考えています。シードというよりはPMF(プロダクトマーケットフィット)に近いフェーズの企業を支援することができれば、世の中を良くする事業をまさに“booost”させられるのではと思い、今回依頼を受けさせていただきました。
高塚:
組織づくりにおいて正解は無いのは分かりつつも、人材の採用やカルチャー、複雑化するプロダクトに合わせた組織の構築など、目前に迫る大きな変化をどう乗りこなしていくか日々模索しています。
若狭:
そうですね、その壁打ち相手のような存在からスタートしていければと思います。
booostの事業への印象
― 世の中が良い方向へ動いていくための仕組みをワークさせる
若狭:
booost が今やろうとしていることは、CO2の削減だったり、人権の課題解決の仕組みづくりだと思います。そういうのって、「がんばろう!」という掛け声だけではやはり難しいと思っており、EUをはじめ世界的にインセンティブを働かせるレギュレーションができている段階ですが、そのような世の中が良い方向に動くためのメカニズムが必要です。booostはその点を強固にしようと動いていて、実際にその仕組みが社会でワークするように貢献しようとしているし、すでに貢献しているという印象を受けました。
高塚:
まさにその通りで、ルール化が進む中で大手企業から徐々に対応していく訳ですが、自社に加えて関連会社やサプライヤーすべてが対象となり、情報の範囲もCO2から人権まで幅広すぎるので情報把握だけでもかなり大変です。その情報集めを1つ1つの企業が労力を割いて効率化していくことは、本質的ではないというか、本来のベクトルはそちらではなく改善の方です。
我々チームとしては、インターネットやソフトウェアをうまく活用して把握する仕組みをつくり上げたうえで、その先の改善というところにチャレンジしていきたいですし、貢献していきたいと考えています。
若狭:
個人の努力も大切ですが、やはり影響力の大きい企業や物流に正しいインセンティブが働き変化を起こすことによって、結果的に目指す形が実現できているという形が理想であり、「仕組み化して実現させていく」というbooostの着眼点がすごく正しいなと思いました。
まずは膨大なデータの把握というところではありますが、複雑なものを取り扱うということはむしろソフトウェアの得意分野であるので、正しく現実社会をモデリングしていく点ですごくやりがいのある事業だと感じています。
booost Sustainability Cloudの未来構想
― エコシステムのハブとなる存在へ
若狭:
booost Sustainability Cloudはすでに多くの企業に導入され、実際に活用されているソリューションであることは大きなアドバンテージだと感じています。今後使われていく領域を広げていくためには、単体の魅力も大切ですが、プロダクトとして疎結合でうまく連携させていけるかが重要だと思います。スケールアップではなくスケールアウトすることで事業が大きくなるので、ネットワークエフェクトも重視すべきポイントです。
高塚:
気候変動への対策はスピードも重要で、我々だけで推進できると思っていません。脱炭素ソリューションは他にも多数プレイヤーがいますが、それらを繋げていく仕組みも考えています。気候変動への対策はスピードも重要で、我々だけで推進するには限度もありますので、業界全体を “booost”させる存在を目指しています。
若狭:
booostがハブとなってエコシステムのようなものができると良いですね。先ほども申し上げた、インセンティブが正しく働く仕組みを実現するためには、エコシステムに参加するプレイヤーが増えることを期待したいです。1つのプレイヤーで解決できる課題ではないと思いますし、強弱はあれど皆が連携することによって、全体としての作用が生まれていくと思います。
開発チームのカルチャーについて
―よりミッション達成にフォーカスした組織へ拡大・成長
高塚:
我々のミッションはとても分かりやすく、モチベーションを維持しやすい環境です。エンジニアにとって「地球のために仕事をしている」「名だたる大企業と一緒に試行錯誤できる」という環境はなかなかなく、やりがいを感じやすいと思います。
現在はまだまだ小規模な体制なので、メンバーは皆主体性があり、本当に日々議論が活発に盛り上がっていて、リモートやフレックス等の環境下でも誰でも出入り自由な仮想ウォールームをつくったりして、オープンな雰囲気でやっています。良いプロダクトを作る上でも、生産性を高める上でも「心理的安全性」を大切にしています。余計な気遣いなどで時間を無駄にしたくないのです。ロールは違ってもみんな対等で、上下関係は作りたくないと本気で思っています。
一方で、今の人数だからこそ保てている雰囲気でもあり、今の良さを残しながら組織拡大をする難しさについても日々考えているところです。
若狭:
お話を伺いながら、小規模な体制だから可能な良い面が出ているなと感じました。ここからは高塚さんも懸念されているように、人数が増えるにつれてだんだんとお互いが何をやっているか分からないといった状況に直面してきますね。そのときに、良い意味で思い切ってシフトすべき部分も出てくると思います。今までのように全員でワイワイというわけにはいかないので少し寂しさを伴うことでもあるとは思いますが、小規模な体制を維持したままではミッションの達成は難しいと判断されたわけですから、この切り替えが重要なポイントだと考えます。
booostのミッションにフォーカスし、組織拡大をミッション達成のマイルストーンに位置付け、メンバーの納得感を高めながら新たなカルチャーを作り上げていきたいですね。
booost開発チームの成長戦略
― グローバルな組織にシフトするフェーズを迎えている
高塚:
今後も引き続き、先陣を切ってサステナビリティに取り組む大手企業のテクノロジーパートナーとして、ともにプロダクトを磨き上げていきたいと考えています。そして、ゆくゆくは全世界に展開していくことで、世界中のサステナビリティ課題解決に繋げたいですね。具体的には、サステナビリティ領域におけるERPシステムを作るようなイメージですが、会計システムよりも広く深い機能開発になっていくと感じています。
その上でもやはり質の伴った組織の拡大がマストです。何が必要かを自身で考えられる質の高い人材の獲得ができるかどうかが、今後を左右する肝であると重視しています。
若狭:
海外への進出という点においては、ぜひサポートしたいと思っています。取り組んでいる課題が地球規模であるため、事業としても、開発チームの話としても、いずれはグローバルにやっていける組織であるということが、非常に重要なのではないかと感じています。特に、後者の開発組織としてのグローバル化は必須ではないでしょうか。
残念ながら、日本は少子化やコンピュータサイエンスを学ぶ学生が非常に少ないこともあって、開発組織の拡大という面でかなり厳しく、国内だけで求める人材を確保するとなると、早い時点で限界にぶつかるという感覚があります。私は直近、メルカリでインドの開発拠点を立ち上げましたが、やはり会社にとって必要なことだったと実感しました。booostが成長する過程でもトライすべきことだと感じています。ぜひ、一緒に進めていきたいですね。
高塚:
国内のみで人材確保することの難しさは、日々の採用活動で強く実感しています。開発体制のグローバル化を意識して、英語が話せるメンバーや外国籍のメンバーも増やしており、少しずつ準備を進めています。
今後、インドなど海外現地の開発チームづくりは、ぜひ一緒に進めていきたいと思います。
booostへこれからジョインするbooosterへのメッセージ
― 社会にポジティブインパクトを与えるやりがいがある
若狭:
先ほど高塚さんのお話にも合ったように、booostの事業は何を目的としてやっているかが明確でやりがいを感じやすく、モチベーションを保ちやすいと思います。ビジネスのインフラであるインターネット、コンピュータ、そしてソフトウェアを正しく理解して、正しく作りこめば、その土台の上でありとあらゆる産業を実現することが可能です。その実現を追求すると共に、社会および地球に対するポジティブインパクトも実感しながら働ける会社であると思います。
今回のアドバイザー就任に際してbooostの経営陣にもお話を伺いましたが、テクノロジーを上手く利用して価値を届けたいとおっしゃっていたのも印象に残っています。これらは、私自身がアドバイザーをお受けした理由でもありますし、既存メンバーやこれからジョインされる方にも同じように思っていただけるのではないでしょうか。
もう一つは、組織拡大の過程を経験できることです。人数が2倍、3倍となると、今は見えていない様々な問題がでてきます。それを皆で体験することで、知見を得られますし、ご自身の成長、学びの場となるはずです。この転換期を組織の一員として体感できるのは魅力的だと思います。
高塚:
サステナビリティはこれから間違いなく成長する市場ですし、誰もが取り組むべきことです。それを大手企業とスピード感をもって取り組めることが大きな魅力ですし、やりがいを見失うことはまずないと思います。
また、技術面でもやりがいは大きいと感じています。ESGデータは多種多様で、それぞれの深さもあり、データの関連も複雑です。さらに、顧客企業単体で完結するものではなく、グループ企業や取引先企業も含めた管理が必要です。ESGを取り巻くルールもたくさんあり、変化していくのである程度の予測も必要になります。こういった複雑な課題への挑戦を通して、エンジニアリングを楽しめるだけでなく、エンジニアとしての成長も感じてもらえると思います。
アドバイザーとしての抱負
― 持続可能でグローバルな開発チームの業界事例に
若狭:
私自身の目標として、これからアドバイザーとして企業に価値を還元できるようになりたいと思っています。今回のbooostへのアドバイザリーを通じては、目の前の課題解決に取り組むことはもちろんですが、それにフォーカスしすぎず、長期的に社会に対してポジティブな価値を届けられる持続可能な開発チームづくりを目指したいです。これに近づくことができれば、業界にとっても良い事例になると思いますし、周囲もきっと勇気づけられるはずです。
また先ほども申し上げた通り、グローバルな組織づくりというところは特に貢献したいと思っています。インターネット上のプロダクトには国境がありません。これまでの経験上、すべてを国内で完結させることはある意味心地が良いですが、リスクをとらなければ本当の意味でのミッション達成には繋がりません。この点を一緒に挑戦していきたいと考えています。
高塚:
今回の対談を通して、booostのこれからが楽しみになると同時に、気を引き締めていっそう邁進していきたいと思いました。若狭さん、改めましてこれからよろしくお願いいたします!
プロフィール
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