甘ーい想いのその先にあるもの 〜ドラマ&コミック『オールドファッションカップケーキ』〜
「俺はもうすぐ40で。彼はもうすぐ30で」
都内、山手線内でPR動画が流れていて、目にした方もいらっしゃるかも、ですが、コミックでもドラマでも一世を風靡した?『オールドファッションカップケーキ』
アラフォーとアラサーのリーマン2人の、じれったい想い。
なぜか高校生の末っ子のイチオシドラマで、セリフも覚えちゃうんじゃないかな、というくらいリピ。
字幕のないHuluのみだったのが、字幕ありのNetflixでも始まったのを機に、私も視聴。
こちら、ジャンル的には「年下男前攻めxあまあま美人受け」なBL(ボーイズラブ)だけれど、全5話中、第4話のラストまで、エチエチシーンどころか、キスシーンも出てきません。
平穏な日常を送るアラフォー上司を、彼を密かに慕う部下が「アンチエイジング」と称して、スイーツ巡りに連れ出す。
部下・外川の言動の端々に、上司・野末を思う気持ちが見え隠れするけれど、野末は、のほほーんとして気づかない。
高校生の初心さとはまた違う初心さに、観ている方がジラジラされてしまう、、というか、今時、高校生の方がもっとグイグイいくだろーって感じなのです。
そもそも、「アンチエイジング」でスイーツ食べ歩きなんて!次はメタボ対策が必要になっちゃうよって(笑)
でも、「変わらない日常」の安定に浸って、出世からも恋愛からも一歩引いていた野末さんが少しずつ変わっていき、最後は波に飲まれることも覚悟での一歩を踏み出す姿に、アラフォーどころか、アラ還な私もなんか力をもらえて、時々、リピしています。
まっ、武田航平さんの役柄以上の温かい「癒し」の笑顔を見てるだけで幸せな気分になれるのですが。
ちなみに我が家のBL師匠・末っ子は外川役の木村達成さんがお気に入り。彼が出演した舞台「ハイキュー」やwowowでのコンサートも観まくってます。
私はあったか癒し系が好みですが、彼女はキリッとした男前系が好きみたい。まっ、理想と現実は違うってことは親見てりゃわかると思いますが。
それと、野末の同期で上司・桐島役の吉井怜さんも良き良き。
上司が女性っていうのもいいし、普段、ちょっときつくて時にイヤな女役の多い吉井さんが、きつい言葉でありながら同期の野末さんのことを認めていて、応援したいと思っているのが伝わってきて、素敵。
そうそうBLドラマではお馴染みの水石亜飛夢さんも同僚役で出てますよ。
もちろん、コミックも揃えてます。
1巻目の最後数ページまではドラマと同じ初々しい展開ですが、2巻からはBLらしくエチエチシーン満載。
でもドラマの先を描いてるこの第2巻「オールドファッションカップケーキ with カプチーノ」
かわいい年下彼氏との恋愛にまるで初恋のようにウキウキな野末。
でも、ちょっとした出来事で、ハタと現実にぶち当たる。
それはオフィスラブあるあるな、2人の関係が周りに知られたら、、の苦悩。
これはリーマン系BLでは必ずと言っていいほど出てくるテーマ。
自分の「外」での顔の時間のほとんどを費やす「職場」。そこでの恋愛=「職場恋愛」「オフィスラブ」というハードル、しかも相手が同性。
男女であれば、周りに知られたところで、まぁ、すんなり受け入れられる可能性が高いけれど、この恋は自分だけでなく、若くて無限の可能性を持っている相手の社会的地位や将来を潰してしまうことになるかも、ということに思い至り、苦しむわけです。
野末は、それまで自分の常識にはなかった「同性からの思い」や「同性への思い」を受け入れたけれど、今の社会は「(自分の)常識とは違うこと」を受け入れる柔らかさが、まだ足りないから。
多くの人にとって「カップル=異性同士」が常識な世の中だから、同性カップルはその常識の壁に苦しめられてしまう。そんな差別、偏見で大切な人が苦しめられてしまうくらいなら、距離をおこう、関係を諦めよう、と思ってしまう。
ただただ、その人が好きなだけなのに、その人を守るために、、、。
コミック『カメレオンは手のひらに恋をする』の第1巻のラスト、主人公2人が人混みの中で手話で相手を思う言葉を交わすシーンで、こんなセリフがありました。
いつか、相手が異性だろうと同性だろうと、障害があろうとなかろうと、すんなり受け入れられる社会になっていくのだろうか。制度も人の心も。
「(自分とは)違うもの」を受け入れることが苦手だからなぁ、日本(人)は。
ということで、とりあえず、まずは私自身の決意。
息子に「彼女、できないの?」って聞くのはやめよう。
娘と「理想の彼氏像」を語るのはやめよう。
人を思う気持ちにジェンダーも年齢も関係ないことをBL通してこれだけ学んでるんだから。
ましてや、恋愛に興味のないアロマンティックの可能性だってあるわけだし、そもそも、そんな話自体がセクハラになるよねーたとえ親子間でも。
外川が言ってた。
昔から言うじゃない?
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ!」って。
誰を好きになろうが、好きにならまいが、
その人が幸せならいいじゃん。
そう言える社会に、早くなって欲しいし、しなきゃいけない。
そうしたら、このドラマは原作の佐岸左岸さんが言うように「世界中のどこにでもある、ごくありふれたラブストーリー」になるのでしょう。
そんなふうに、にわか腐女子は思うのであります。
ちなみに、すでにBlu-ray&DVD発売中。
もちろん?残念ながら?、字幕なし、です。
先月(2023年11月)から地上波で深夜再放送してましたが、そちらも字幕なし。
このバリアーが崩される日は、来るんだろうか、、。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!