法と人権~ドラマ「やさしい猫」
いつものように自動で録画されていたドラマをイッキ見しました。
NHK土曜ドラマ「やさしい猫」
インスタでレビュー載せたのですが、なんとなく書き足りなくて、Noteにも書くことに。
災害ボランティアでの出会いから、友情、そして愛情が芽生え、家族になったミユキとクマさん。でも、失業により、結婚を延期しているうちにクマさんがオーバーステイに。
婚姻を証明する書類を揃え、自ら入管に行こうとするその道中で逮捕されてしまいます。
このあたり、まるで待ち伏せているかのような警官や入管職員がちょっと悪者っぽく見えてしまいましたが、後ほど、二人を支援する元入管職員(吉岡秀隆さん)が、「職員は法律に則って正しいことをしているのだから、非難するような記事はできない」というようなことを言うように、「法」を順守する立場からすれば、オーバーステイは確かに法を破ったわけで、処罰の対象となるのはしかたないとは思います。
ただ、体調が悪くても、詐病だと言われて医師の診察を受けられない、という状況があるならそれは、やはり人権侵害と思うのです。たとえ、法を犯しても、人権は人権として守られるべきだと思うからです。処罰だから、と、人権侵害をしていいわけがありません。
通常の犯罪だと、むしろ、被害者の人権より、加害者の人権の方が守られているような面がします。被害者は、名前も顔も、時に知られたくないような過去やバックボーンまで詳らかにされるのに、加害者は「更生の余地あり」「将来のことを鑑みて」といろいろなことが隠されたりして、ある意味、守られることもあるくらいなので。
でも、この入管法の違反については、まるで法を犯した人には人権すらない?と思えるような、、、。
もちろんドラマだから誇張している部分はあるでしょう。
でも名古屋入管でのウィシュマさんの死亡事件などの報道を見ると、それほど大げさでないのかも、とも思えたり、、、。
もちろん悪意を持って、オーバーステイしたり、法を犯したりする人もいるでしょう。そういうことが実際にあるから、対応も厳しく、すべて疑ってかかる、ということになっているのかもしれません。
だからこそ、「真実」を見いだすって難しいって思います。
ミユキさんとクマさんが真実の愛で結ばれた夫婦、家族であることを証明することにどれだけ苦労するか。
目に見えない「想い」が本当であるか、本物であるか、それをどうやって第三者に理解してもらうのか。
一緒にいた年月の長さ?撮りためた写真?思い出の数?
でも、長い長い正式な本名を正しく言えなかった、ということだけで、「想い」も否定されてしまう。
このあたりの裁判での入管側の代理人(麻生祐未さん)の演技がほんと、怖かった。
感情のない、抑揚もない淡々とセリフで相手を突き刺すような…。
法律やルールを遵守する。それを犯した場合はきちんと糾弾する、そういう役目って、こうやって心を殺さないとできない役割なのかもしれない、とも思わせるような、冷たい表情と言葉でした。
それとこのドラマ、「不法滞在を正当化してる!」と炎上してたらしい。
うーん、そうなのかなぁ。
確かに法律やルールを破ることはいけないこと。
でも、クマさんの場合は、入籍や婚姻の証明書等に必要な手続きが複雑で、本国からの証明が必要だったりして時間もかかり、それが原因で期限を過ぎてしまったわけで、、。
またいろんなルールを正しく理解していなかった、という点も裁判で分かってきます。
犯罪を犯罪として処罰するのは分かるし、情状酌量してたらキリがない、というのも分かります。
けれども、手続きの簡素化とかデジタル化とか、そういうことにより、「犯罪を犯さずに済む」ようなルールのあり方を考えることも必要なのでは?と思いました。
犯罪はないに越したことはないのだから、起きた時に取り締まるだけでなく、起きない、起こさない工夫をすべき、ってこと。
あー、例えばこんなこと。
「一時停止違反を取り締まるために、警察官が陰に隠れていて、違反したら、飛び出して、呼び止め、切符を切る」→わざわざ罪を犯すのを待ってる
じゃなくて、
「一時停止が必要な場所であることが分かりやすく表示され、そこで警察官が姿を見せて見守っていることで、ドライバーが一時停止を守る」→犯罪も起きず、事故の抑制にもつながる。
こうであるべきでは?
オーバーステイなどが犯罪なのはもちろん分かります。
でもこれだけ、国を超えて人の行き来が増え、日本の経済も外国人パワーの力が不可欠になってきた時代を鑑みた法律や制度、手続きの見直しが必要だと思います。
そして、このドラマでは、在留外国人に係るいろんな問題を提議しています。
「仮放免」「在留特別許可」「収容」「強制送還」、、知らないことばかり。多くの人にとってもそうなのでしょう。
ドラマの公式サイト内「やさしい猫通信」ではドラマで出てきた言葉やエピソードなどを詳しく深掘りしています。
ミユキの娘マヤの友人ハヤトを通して、仮放免だと、就労もできず、移動も制限されることを知らされます。
それを知って人は皆、思うのではないかしら?それってどうやって生きていけってこと?と。
私自身、制度そのものが、「どうやったら日本で暮らしていけるか」ではなく、「どうやったら日本で暮らすことを諦め、出て行く気にさせるか」みたいに感じられ、なんか、日本って、「日本人」でない「ちがう人」に対して冷たい国なんだなぁ、と思ってしまいました。
移民が多い国は、「いろんな人」がいることが当たり前なので、障害のある人も暮らしやすいって言われるけど、「みんなと同じ」であることを「良き」としてきた「島国根性」がまだまだ残っているのではないかなぁ。
最後に、、印象に残ってるのは、最終話でのミユキの母(余貴美子さん)のセリフ
生きるってそもそも辛いこと、それをスタートとして、がむしゃらに生きていく中で、幸せを知り、人に優しくできるようになる、、ってことかなぁ。
アラフィフから、もう少しでアラ還になる私。
年齢を重ねてきても、まだまだ知らない世界、知らない人々の苦労、そして知らない幸せの形があるんだなぁ、と考えさせられたドラマでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。