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今週のおすすめ本 vol.25

店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。
今回は、荒井裕樹さんのエッセイ『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』をご紹介します。

障害者文化論や日本近現代文学を専門とする荒井さんが、「良い文章とは何か」という問いに向き合い、「書くこと」について綴ったエッセイです。


言葉を綴ること=生きること

日常生活を送る上で求められる「良い文章」とは、多くの場合、主旨をわかりやすく伝え、誤解されることのないもの。
しかし、本書で語られるのはそういった「機能」や「役割」を果たすことを目的とした文章ではなく、もっとつかみどころのない、だけど読むことで心揺さぶられるような文章についてです。

綴ることが、生きることにもつながるような文章。
自分が生きていることを、自分自身に感じさせてくれるような文章。
そうした類いの文章が、きっと存在する。少なくとも、存在していてほしいという願いを、私は抱いている。
この本は、そうした願いを抱く人と、その願いの輪を広げていくための本にしたい。

はじめに より

「良い文章」とは何なのか。迷いながら、悩みながら、その答えを求めて綴られた言葉が並んだのが本書『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』です。


伝わる言葉にすることで、削ぎ落としてしまうものがある

個人的にとても良いなと思った一節をご紹介します。

文章がきれいにまとまると、落ち込むことがある。この感覚はなかなか上手く表現できない。強いて言うなら、世界に対して不誠実なことをしてしまったかもしれない、という罪悪感に近い。

「自分がやるしかない証明作業」

新聞に執筆した、息子さんとのやりとりについての短いコラム。読者からは「息子さん、可愛らしいですね」と好意的な感想をもらったものの、荒井さんが実際に息子さんに感じていたのは、もっと愛憎入り乱れるような複雑な感情でした。
新聞のコラムには文字数を始め、さまざまな制約がある。その中で文章を整え、まとめ上げるという作業の過程で、大切なものを削ぎ落としてしまったのではないか。そんな思いについて書かれた文章です。言葉と誠実に向き合う、荒井さんらしさが感じられます。

その他、専門である日本文学や障害者文化論についてのことや、日々の暮らしを通して感じたことなどが綴られた一冊になっています。本文の素晴らしさはもちろん、装丁、装画も美しく、丁寧に作られた本書が、一人でも多くの読者のもとに届くことを願っています。


そのほかの著書もおすすめです

荒井裕樹さんの他の著者も取り扱いしています。
精神科医に開かれたアート教室を取材した『生きていく絵』、内容的には今回ご紹介した『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』と繋がる部分も多い『まとまらない言葉を生きる』、障害を軸に生きづらさについて考える『車椅子の横に立つ人』、どれもおすすめです。



今回はここまで。
取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。
そのほか、本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。


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