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2024年のsceneを振り返る

早いもので2024年ももうすぐ終わり。個人書店「古本と新刊scene」は、なんとか3回目の年越しを迎えることができそうだ。

2年半前に店舗を始めた時から、日々起きたことや思ったことを日記としてまとめて、毎週「本屋営業日誌」というタイトルで更新し続けている。一度書いたものを見返すことは普段はほとんどないのだけど、今回はその雑文をもとに、1年を振り返ってみようと思う。せっかくなので、売上の推移なども合わせて見ていくことにする。

ちなみに毎週書いている日記はこちら。

1月

年始の営業は3日から。本当は4日からの予定だったけど、3日に来店したいという方がいたので1日早く始めた、と日記に書いてある。
年始早々に躓いてしまったようで、売上が悪いだの平日来店ゼロだの碌なことが書かれていない(いつもそうといえばそうだけど)。この頃はまだ平日17時オープンだった。
13日に店内で音楽イベント、23日に読書会をやっている。あと金曜日のおすすめ本紹介noteをこの月から始めた。月末に能登半島地震の義援金を少額ながら振り込んだ。

ライブイベント中

【売上の前年比】
店舗:138%
通販:333%

【よく売れていた本】
『これより先には入れません』 谷川俊太郎 木下龍也 (現在完売)

数字の規模が小さいのでものすごく伸びてるように見えるけど、これでも全く足りていない。
2023年の1月との比較になるんだけど、その時期はまだ始めて半年とかだったので、店舗も通販も安定していなかった。



2月

雨の日が多かったようで、入口の木製の扉が水分を吸って膨らんで開閉しづらくなり、都度やすりで削っていた。
出店や催事はなし。地方誌に記事を執筆したくらいで、目立ったことはしていない。

膨張する木の扉

【売上の前年比】
店舗:94%
通販:589%

【よく売れていた本】
『鬱の本』 

2023年の2月はゆうとぴあグラス展という展示イベントをやっていた一方、今年は何も催事を用意しておらず、その影響で店舗は前年割れ。
通販の方は前年の数字が低すぎて、伸びがとんでもないことになっている。



3月

平日の12時オープンをこの月から始めている。変更後は日中の来店が続いたようで、少しだけ浮かれている(その後すぐ失速する)。
9日と10日に御船古本市に出店。会場の蔵がめちゃくちゃ寒かった。
その後謎の胸部痛があったり、入口の鍵が開かなくなって鍵屋さんに出張してもらって2万円払ったりと踏んだり蹴ったりなことが続いている。一時期精神的にだいぶ参っていたけど、通販でダンボール2箱分くらいの量の本を一気に注文してくれた人がいたおかげで救われた。と思ったら27日の閉店後に、上の階から漏水が起きて店内が水浸しに。本の被害は一部だけだったものの、照明が付くようになるまで3日もかかったりと、しばらく営業できない状態が続いている。
3月、色々起きすぎだろ。

わかりにくいけど、床がビショビショになっている

【売上の前年比】
店舗:132%
通販:222%

【よく売れていた本】
『句点。に気をつけろ』尹雄大

3月28日以降は店舗の営業ができていないんだけど、2023年がひどすぎて前年割れしていない。休業していた30日と31日に売上が立っていて、様子を見に来てくれた人が本を買っていってくれたんだと記憶している。



4月

水に濡れてしまった本については、オーナーさんに補償してもらえることになった。リストを作ったり写真を撮ったりと地道な作業を続けつつ、6日から営業再開。扉の建付けが悪くなっていたり、床板がたわんでしまっているため、工事をしてもらわないといけなかったんだけど、それは店の定休日を使って少しずつやってもらうことにした。
営業できなかった期間は10日間とそこまで長期に及ばずに済んだ。しんどかったけど、手を差し伸べてくれる人もたくさんいて本当にありがたかった。
通販用に準備していたオリジナルステッカーが休業期間中に出来上がり、4月から販売している。通販の送料と同じ520円(現在は600円)という割高な商品で、店を支援してあげてもいいよという方のために作ったものなんだけど、100枚用意した在庫は、これを書いている12月末現在で半分近くになった。本当に助かっている。

復旧作業中

【売上の前年比】
店舗:106%
通販:274%

【よく売れていた本】
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩 (現在完売)

4月も営業できていない期間があったけど、来店希望の方が何組かいたのでちょっと開けたりもしていた。
小原晩さんの『唐揚げ弁当』は2年前の既刊だけど、佐久間宣行さんのYoutubeチャンネルがきっかけで注文が殺到した。



5月

アーケード街での古本市などを中心にした、熊本の本のお祭り「本熊本」関連のイベントとして、18日にうちを会場にトークイベントを開催させてもらった。自分と、移動本屋のモフbooksの吉田さん、ブックカフェmalouの水上さんの3人で本屋について話すというもので、ありがたいことに店内がいっぱいになるくらいには来場者があった。あとTVのローカルニュース番組に取材を受けて、少し取り上げてもらった。
これまで店をやってきて、「売上ゼロ」の日がどうしても月に何日かあったのだけど、5月は初めて「ノー売上ゼロデー」を達成できた。

たくさんのご来場に感謝

【売上の前年比】
店舗:135%
通販:182%

【よく売れていた本】
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩 (現在完売)

売上ゼロデー撲滅やイベント開催のおかげもあって、店舗の売上は悪くなかった。
『唐揚げ弁当』の余波がまだ続いている。小原さんに何度も本を送ってもらい、ひたすら発送していた。



6月

1日から椎猫白魚さんの陶器のフラワーベースのPOP UPを開催。それと、以前から準備していた2周年記念のTシャツも販売開始。
月末の29日と30日は、アミュプラザ鹿児島で開催されたイベント「カルチャーフェス」に出店。今思い出してもニヤけるくらいめちゃくちゃ本が売れた。この時期は色々と頑張っていた。売上的にもこの月が今年のピーク。

椎猫白魚さんのポップアップ

【売上の前年比】
店舗:128%
通販:310%

【よく売れていた本】
『26歳計画』椋本湧也

2023年の6月は漫画雑誌の青騎士の作家さんに来てもらってサイン会をやっていたので、前年を超えるのは難しそうだったのだけど、イベント出店の大当たりのおかげで乗り越えられた。
『26歳計画』はこの時期に出た新刊ではないけど、在庫切れから久々の再入荷でたくさん手に取ってもらえたと記憶している。新しく作ったTシャツもよく売れた。



7月

13日に菊池の音楽イベントに出店するも、結果は奮わず
。調子の良かった先月までとは打って変わって全体的に下降線をたどっており、日記の文面もトーンダウンしまくっている。

雰囲気は良かったんだけど、売上はだめだった

【売上の前年比】
店舗:125%
通販:116%

【よく売れていた本】
『シン・ファイヤー』大原扁理 稲垣えみ子

6月と比べると勢いを落としてしまったので、売上がかなり悪い印象だったけど、数字だけ見てみればそうでもない。一方で、通販の方は実際ちょっと落としてしまっている。2023年の7月は、まだ店舗がなかったウェブショップのみの時代に作っていたTシャツを雑誌のGINZAで取り上げてもらい、そのおかげでよく売れていた。



8月

3日と4日に山鹿古本市に出店。体調を崩す人も出るほどの酷暑だったものの、売上的にはまずまず。17日には音楽イベントも開催。
お盆の三連休の売上がパッとせず、落ち込んでいる。この時期、土日の売上がかなり悪い日が続いていて悩んでいた気がする。

夏の山鹿は暑かった

【売上の前年比】
店舗:197%
通販:65%

【よく売れていた本】
『しぶとい十人の本屋』辻山良雄

店舗はなんだかんだで山鹿古本市の貯金が効いているのと、2023年の売上がひくほど悪かったのもあってかなり伸びている。
通販は今年の数字自体はそんなに悪くはなかったけど、前年の8月後半、SNSきっかけで通販からけっこうな数の注文をもらっていたので、それには及ばず。



9月

土日の売上不振が今月も続いている。23日の祝日に売上ゼロを記録してしまい、そのことについてSNSに投稿したところ、Xの方で5000以上いいねが付いてしまい、不名誉な形で注目を集める。
28日と29日は、佐賀の古湯で開催された「湯けむり古本市」に出店。

古湯は良い場所です

【売上の前年比】
店舗:118%
通販:170%

【よく売れていた本】
『家から5分の旅館に泊まる』スズキナオ

たしかに土日は悪い数字が並んでいるんだけど、平日で結構稼いでいる日もあり、全体としてはそこまで悲観するほどではない。
通販はSNSバズの恩恵も受けて好調だったけど、2023年もこのくらいの時期から売上がベースアップし始めている。



10月

去年に続き、平日の日中は河内町のみかん収穫のバイトをすることになった。そのため、平日の開店時間を12時から16時に変更。
開店時間が4時間繰り下がった影響で、平日の売上はガタ落ち。肝心のみかん収穫も天気の影響であまり行けず、わりと悲惨な一ヶ月だった。
通販の発送に使っている日本郵便のクリックポストが値上がりし、520円から600円になった。そのため、通販の送料も同様に変更。
5日から寺井奈緒美さんの短歌&エッセイ本『生活フォーエバー』の展示(別名義で制作している土人形の販売も)を実施した。大阪のカルチャー誌「IN/SECTS」の「本をつくって本を売る」という特集で、店のことを掲載してもらった。

生活フォーエバー展

【売上の前年比】
店舗:87%
通販:143%

【よく売れていた本】
『IN/SECTS Expanded Edition 本をつくって本を売る』

催事があったにも関わらず、店舗の売上は前年割れ。2023年の10月は玉名のHIKEで行われた本のイベントに出店していて、そこでけっこう良い売上を記録していたので、それが響いたかたちとなった。



11月

平日の店舗売上があまりに落ちてしまったので、みかん収穫の作業時間を午前中のみにして、14時から本屋を開けるよう変更した。おかげで少しは売上は回復できたけど、またゼロの日がポツポツ出るようになってしまった。
10月末にお店を時々利用してくれるお客さんからの誘いを受け、店舗の移転について検討することになった。物件を下見したり資金繰りのことを考えたりと、11月は頭の中は移転のことでいっぱいだった。
24日に不知火図書館のイベント、30日に山鹿古本市に出店。どちらも売上はいまひとつ。

不知火図書館

【売上の前年比】
店舗:130%
通販:105%

【よく売れていた本】
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩
『冬の本』

店舗はあまり良い数字ではなかったのだけど、去年がひどすぎて前年比としては伸びている。通販は去年のこの時期辺りから安定するようになってきているので、前年比を大きく伸ばすのは難しくなってくる。
11月よく売れた『唐揚げ弁当』は、実業之日本社から出た商業出版バージョン。なんだかんだで2024年も『唐揚げ弁当』の年だった、と言って良いかもしれない。
久しぶりに増刷された夏葉社の『冬の本』もよく売れた。



12月

みかん収穫は12月第1週までで終了。平日の開店時間を12時に戻す。
店舗の移転について、話をもらった当初はわりと前向きに検討していて、気持ちも少し浮足立っていたけど、冷静になって考えた結果、今回は取りやめることにした。結果的には何も起きなかったけど、本屋をやっていくことについて自分の考えや気持ちを整理する良い機会になった。
1日は山鹿古本市の2日目に出店。13日にお客さん持ち込みで読書会を開催した。あと12日に並木坂の共栄堂に出張して本の販売をさせてもらっている。

冬の山鹿

【売上の前年比】
店舗:111%
通販:104%

【よく売れていた本】
『MOTHER2のひみつ。』

2023年の12月は、体調不良と連続売上ゼロデーで平日の売上を丸ごとロストしている週があったりしたようなので、もう少し伸びても良さそうだったんだけど、今年も今年で苦しんだ結果がこれ。通販は前半好調だったものの、後半伸び切らず。
『MOTHER2のひみつ。』は受注生産で予約注文していた限定版7920円は入荷日に完売。追加で注文した通常版6600円も、単価が高めな本としてはよく売れている。



まとめ

改めて振り返ってみると、2023年はまだ全体的にふわふわしていたというか、手探りでやっていたのが結果にも出ていたなと感じた。それに比べると今年は少し基盤のようなもの(と言うには脆弱すぎるがまぁ一応)を作れたような気がする。結果的に1年間トータルで122%(店舗のみで計算)の前年比を達成できた。
店舗も通販も、前年よりたくさんの本を手に取ってもらっていたようで、利用して頂いたことはとても嬉しいのだけど、今の売上のままでは、この先続けていくのに心許ない。まだまだ頑張らないといけない。

さすがに実際の売上高まではここには書かなかったけど、数字の推移を1年間通して見ることで色々と気づきもあり、自分自身にとって有意義な記事になった。けっこう時間はかかったけど、来年もやりたい。

2025年は展示などの催事をもう少しコンスタントにやっていきたいのだけど、なかなか動けていない。新しいグッズの準備はしているので、いつかお披露目できると思う。

2022年に店舗を開いて2年半。基本的にはただ本を売っているだけの店で、これからもそんなに変わったことをするつもりはなく、とにかく本屋を続けていければと思っている。

店舗で、通販で、本を手に取って店を支えてくださった皆様に心からの感謝を。2025年もよろしくお願いいたします。


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