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今週のおすすめ本 vol.28

店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。
「今週の」とタイトルを付けているにもかかわらず、出店やら何やらで毎週更新できておらず、久しぶりの投稿になってしまいました。

今回は、qp『喫茶店の水』をご紹介します。

タイトル通り、喫茶店で出された水の写真だけを集めたという、異色のフォトエッセイです。


4年間かけて集められた、400店以上の喫茶店の水

本書は、4年間に渡って撮影された喫茶店の水の写真と、それにまつわるショートエッセイで構成されています。
著者のqpさんは画家。フードライターでもなければ、写真家でもありません。ではなぜ水の写真を?という疑問が湧きますが、きっかけは特になく、「たまたま入った喫茶店で、何となく撮った1枚の写真」から始まったようです。


突き抜けたシンプルさが心地良い

喫茶店といえば、「昭和レトロ」の象徴的存在。喫茶店の関連本もそういった視点から書かれたものが多く、建物の外観や内装、テーブル、椅子といった備品、トーストやクリームソーダといった喫茶店ならではのフードメニューの写真を添えながらお店を紹介するという構成のものをよく見かけます。
『喫茶店の水』に収められた写真は、タイトルに違わず、すべてが水。写真の下に小さく店名と地域が記載されているのみで、それ以外の情報は一切ありません。ページを捲るたびに現れるのは、ひたすらに水。そして、それにまつわる短いエッセイ。この徹底したシンプルさが心地よい読書体験をもたらしてくれています。


水の写真から感じる、喫茶店の空気

写真に収められている、水の入ったコップやテーブル、一緒に並ぶ小物や壁の模様、窓から差し込む光。そこからイメージを拡張して、その喫茶店のことを考えてみる。情報が限られているからこそ、読者の想像力に委ねられる余地がたっぷりと残されていると言えます。
建物の外観や全体の雰囲気、お店の成り立ち、店主さんの姿など、写真やテキストの外にあるさまざまなことを想像しながら、静かに佇む水を眺めていると、実際に喫茶店で過ごしているときのように心が穏やかになっていきます。



今回は『喫茶店の水』をご紹介しました。
取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。
そのほか、本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。


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