【読書メモ】『めんどくさい本屋 100年先まで続ける本屋』(竹田信弥、本の種出版)
友人の竹田信弥さんが4/20に自著を出すというので読まなければと思っていたのだがコロナコロナで忘れていたところ、ちょうど原稿の関係上、読まなくてはいけなくなったので読んだ。
竹田さんと知り合ったのは本書にも出てくる「いつか自分だけの本屋を持つのもいい」という東京藝術学舎の講座だったろうか。近くの席に座っていてどちらから声をかけたのかは忘れたが第一印象は怪しいだった。何をしているか分からないひと。
それが何回かあった講座の最後の方では白山に実店舗を開くことになったといい、本当に開き、本屋入門ゼミを一緒にやることになり、赤坂に移転して、雑誌や書籍を出版したり雑誌のロケ地になったり、いつの間にか自著まで出すようになったというのだから感慨深い。「思えば遠くへ来たもんだ」(調べてみたら海援隊の曲だった)という言葉が頭をよぎるのも仕方ない。
本書にも僕の名前がちょいちょい出てくるのがまた面白いのだけれど、本書で僕は松井さんや田中さんや中村さんのように取材を受けてはいない。彼とはそういう距離感なのである。たぶん見ている方向も実現したい世界もそう離れてはいないし仕事を一緒にすることも多いけども、こうバイヴスが微妙に違うというかそういう感じ。
でも彼の話を聴くと刺激になるし、彼の仕事を見て自分も頑張らなければという気持ちになる。良い仕事仲間を同時代に持てて嬉しいなとあらためて思ったのだった。
ところで、最後に本書についても少しだけ触れておくと、内容云々は取材を何回もしていて知っていることばかりなので置いておくとして、以下の文章だけは引用しておきたい。
"人生において大事なことは、負けないことだと思っている。勝つことでらなく、負けないこと。負けなければいい。ある一定の時期においてトントンであるなら、それでいい。勝つことを至上命題にすると、勝ち続けないといけなくなる。
そんな考え方だから、生き残ることを目標に、本屋をやっている。" p.232
本屋という仕事の定義は様々だが、仮に「知の世界を提示すること」だとしたら、生き残ることが第一になるのが明白だと思う。知の世界は知ることの世界。積み重なった知識を知る世界。新しいことを知り積み重ねる世界だと思うからだ。
「巨人の肩の上に乗る矮人」という言葉があるけれど、その巨人と出会うための場所が本屋。いまの社会はダメな部分も多いけども悪くない部分も多いと僕は思っていて、これからより良くなるためには巨人の肩の上に乗る人が一人でも増えないといけないと思っている。だから、巨人と出会うための場所はいつまでもいつまでもそこに在るべきなんだと僕は思う。
双子のライオン堂。100年先も続いていて欲しいなあ。