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【読書メモ】『あの本は読まれているか』(ラーラ・ブレスコット・吉澤康子(訳)、東京創元社) 4/21発売予定 サンプル

縁あってご恵贈いただく。

全編にわたって静かな印象だが所々ハッとさせられるような文章があって、寂しいような悲しいような愛しいような複雑な気持ちになる読後感。

それにしても一冊の本を、しかも思想書ではなく物語を、兵器として考えてバラまくということが実際に起きた。それを真面目に考えて、真面目に実行した人々がいたということに驚く。

言葉が異常に軽く扱われるいまの日本にいるとそんな世界があったということに実感が全く湧かない。

一冊の本がさながら思想兵器のような効果を及ぼすだなんて。いまの日本では控えめに言っても考えもつかない。

だがきっと言葉はそれだけの力を持っているはずなのだ。インターネットとSNSが普及しフェイクニュースに溺れる今の世界ではどうなのか僕には分かりかねるけれど。そしてライターの端くれとしてその力を信じてはいるのだけれど。

最後に物語の終わり方について。噂話のようなこの軽さは厳しい時代を生き抜いた人間の強さが滲み出ているようで嬉しかった。


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