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レティシア書房店長日誌

新田和長「アーティスト伝説」
 
 著者の新田和長は、東芝EMIで音楽プロデューサーとして多くのミュージシャンを世に送り出しました。例えば、フォーククルセイダーズ、赤い
鳥、チューリップ、長渕剛、寺尾聡、平原綾香、忌野清志郎等々.......。名前をあげるだけで、日本ポップスの黄金時代が見えてきます。(新刊2420円)
 

 このなかに、北山修&杉田二郎の「戦争を知らない子供たち」と、加藤和彦&北山修の「あの素晴らしい愛をもう一度」について書かれた章があります。60代、70代世代にとっては、今でも歌えるスタンダードナンバーです。
 「戦争を知らない子供たち」は、開催されていた大阪万博の会場でアマチュアバンドが集まって決起大会を開く企画の中、統一テーマ曲として浮上した曲でした。しかし杉田二郎は、他のコンサートへの出演が組まれていたので参加できませんでした。苦肉の作として、「全日本アマチュア・フォーク・コンサート」を結成して、全員で歌うという計画が浮上します。そして公演当日、万博ホールにこの曲が響きわたりました。
 コンサートの最後、北山修はこんなメッセージを送ります。
 「願わくば、100年後200年後、僕たちの子供たちが、またその子供たちが、戦争を知らない子供たちでいて、このタイトルと同じタイトルのもとで、同じような音楽会が開かれれば、とっても良いことだと思います。僕らはそういうことを願って、最後にこの歌をもう一回歌って、お別れしたいと思います」
 北山と杉田による「戦争を知らない子供たち」はスタジオ録音され、1971年発売。ロングセラーになりました。その少し前、加藤和彦と北山修の歌う名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」が世に出ます。そのレコーディング現場での衝突、その後の編集作業のトラブルなど現場にいた著者にしか書けないもので、こんなスリリングなことをやっていたのかと驚きました。
 北山については、はしだのりひこの作曲した曲に彼が詞をつけた「花嫁」についての素敵なエピソードも語られています。
 「『新田君、これは駆け落ちの歌だよ』それが彼の第一声だった。『リードボーカルが女性だから、女の子が主人公の歌を書いた。女の子の時代がくることを描きたかった。」
 実は、これ、北山修のお母さんの物語をベースにして作られていたのです。1971年1月に発表されて大ヒットして86万枚を売ったのです。
この本が面白いのは、まだ音楽が手作りだった時代がリアルに書かれていて、これだ!と思ったミュージシャンをどういう風に成功へと導くかが、まるでエンタメ小説みたいに書かれているところです。創作現場の興奮がそのまま伝わってくる一冊です。

●レティシア書房ギャラリー案内
10/7(水)〜10/13(日) 槙倫子版画展
10/16(水)〜10/27(日)永井宏「アートと写真 愉快のしるし」
10/30(水)〜11/10(日)菊池千賀子写真展「虫撮り2」


⭐️入荷ご案内
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本3」(660円)
おしどり浴場組合「銭湯生活no.3」(1100円)
岡真理・小山哲・藤原辰史「パレスチナのこと」(1980円)
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「てくり33号ー奏の街にて」(770円)
「アルテリ18号」(1320円)
「オフショア4号」(1980円)
「うみかじ9号」(フリーペーパー)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
加藤優&村田奈穂「本読むふたり」(1650円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
孤伏澤つたゐ「悠久のまぎわに渡り」(1540円)

森達也「九月はもっとも残酷な月」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)


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