レティシア書房

京都市内で小さな書店を営んでいます。新刊書、古書、一人出版社の本、そして全国のミニプレスを取り扱っています。また、店内にギャラリーも設置して、様々なアーティストにご利用いただいております。 営業時間13:00〜19:00 定休日 月火 TEL075-212-1772

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最近の記事

レティシア書房店長日誌

パブロ・ベルヘル監督「ロボットドリームス」    この映画のことを思い出して、観終わった後の帰り道、とても幸せな気持ちで胸一杯になるアニメ映画です。  スペインのパブロ・ベルヘル監督が、初めて手がけた長編アニメーション映画。アメリカの作家サラ・バロンによる同名のグラフィックノベルを原作に、1980年代のニューヨークで、犬とロボットが織りなす友情を、セリフやナレーションなしで描いていきます。  物語の舞台には人間は登場しません。住んでいるのはあらゆる種類の動物たちで、歩き、仕事

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      森田真生「僕たちはどう生きるか」    京都在住の数学者森田真生が、2020年パンデミックの発生で、急激な変化を余儀なくされた世界を目の前にして書いた日記からこの本は始まります。(古書1300円)    「これまで国内外を忙しなく旅しながら、数学にまつわるレクチャーやトークをすることを生きがいとしてきた。その僕がなぜ、にわかに京都の山の麓で生き物の世話に明け暮れているのか。僕は世捨て人になって、虫や植物と余生を過ごそうとしているのではない。新興のウィルスが世界中に広がり、気

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        黒田征太郎&池澤夏樹の戦争を考える絵本2冊    以前、このコンビの著作「旅のネコと神社のクスノキ」を紹介しました。 今回ご紹介するのは「対馬丸とボーフィン」(新刊1980円)、「ヤギと少年、洞窟の中へ」(新刊1980円)です。  「対馬丸とボーフィン」は、第二次世界大戦末期、多くの子供を含む民間人を乗せた艦船対馬丸と、それを撃沈したアメリカの潜水艦ボーフィン号が、”対話”するという物語です。 対馬丸「あの時、私はほとんど民間人しか乗せていなかった」 ボーフィン号「俺にそ

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          カーソン・マッカラーズ/村上春樹訳「哀しいカフェのバラード」   村上春樹は、マッカラーズの「心は孤独な旅人」「結婚式のメンバー」の2作品を翻訳していて、本作品が3作目です。「哀しいカフェのバラード」は、前二作よりもかなり短い小説です。マッカラーズを読むなら「心は孤独な旅人」をまず読むべきだと思うのですが、とにかく長い。そして暑苦しい。この小説を映画化した「愛すれど心寂しく」を観て感動して、原作に挑戦したのですが、挫折したという経験があります。その点、本作は短いけれどもマッ

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          ファイト・ヘルマー監督作品「ゴンドラ」    ドイツ出身のヘルマー監督の最新作は、なんと台詞なし映画!それでいておしゃべりな、とても豊かな映画なのです。    父の死をきっかけに村に帰ってきたイヴァは、村にあるゴンドラの乗務員として働き始めます。そこにはもう一人、ゴンドラ乗務員の先輩乗ニノがいました。ほとんど客のいないゴンドラですが、谷間をつなぎ、村人の役には立っています。駅長は威張り屋で、その態度は今ならセクハラ、パワハラオヤジとして糾弾されるところです。そんな駅長を無視

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          森田たま「石狩少女」     古い少女小説に巡り合いました。本書は、昭和15年(1940年)7月に実業之日本社より発行された著者の半自伝的な長編小説です。今年1月にちくま文庫から復刻版が登場して、手に取りました。(新刊880円) この本のことを、千野帽子が「文藝ガーリッシュ」で、文学少女小説の最高峰と絶賛していたことを思い出したのです。森田たまは1894年札幌に生まれ、昭和初期の小説家・随筆家です。1962年には参議院議員としても活躍した女性です。  本書の舞台設定は、明治

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          Lammas Knit展  ニットデザイナー楢原信子さんによる、草木染め・手紡ぎのセーター・帽子・マフラー・湯たんぽカバーの展示販売展が、今日から始まりました。ブランド名のLammas Knit(ランマス・ニット)のLammas とは、フィンランド語で羊のことで、楢原さんと、長女・次女の3人で活動されています。手づくり市や個展を通じて作品を発表しています。   茜で染めた明るい赤色のモヘアのセーターがひときわ目を惹きます。ザクロで染めたジャケットや、原毛のままの暖かな色の

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          村井理子「家族」    琵琶湖畔に住む、翻訳家でエッセイストの村井理子は、愛犬家でもあり、「ハリー大きな幸せ」、「犬ニモマケズ」、「犬がいるから」などの素敵なエッセイを書いています。しかし、自分の家族を振り返った「家族」(古書1300円)は、壮絶という言葉しか出てこない本でした。  父を、母を亡くし、さらに兄を失い、一人になった著者はこんな風に振り返ります。  「時代が良ければ、場所が良ければ、もしかしたら今も三人は生きていて、年に一度ぐらいは四人で集まって、笑い合いながら

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          「生誕140年記念 石崎光瑶」特別展(京都文化博物館)    花鳥風月の日本画は色々観ましたが、この画家に鳥肌が立ちました。  石崎光瑶(1884~1947)は鮮やかな色彩、華麗なタッチで数多くの花鳥画を残しました。富山に生まれた光瑶ですが、19歳で京都に出てきて、竹内栖鳳に入門します。そして特筆すべきは、1916年から1年間かけてインドを旅し、さらにヒマラヤ山脈への登山を実行します。装備も貧弱だったあの時代にヒラヤマに登るなんて、なんと無茶な!(因みに1931年再度インドを

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          戸村文彦「まちの映画館」    映画が好きなので、休みの日にはよく映画館に行きます。映画関係の本もよく読みます。最近は映画作家論や批評集ではなく、その業界で生きている人の生の記録本が好きです。例えば、300本以上のピンク映画を監督した浜野佐知の「女になれない職業」(新刊2860円)、白鳥あかね「スクリプターはストリッパーではありません」(古書1500円)などは面白かったです。    そんな中から、兵庫県尼崎市にある映画館「塚口サンサン劇場」支配人の戸村文彦さん「まちの映画館

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          キラン・ラオ作品「花嫁はどこへ?」    久々に見たインド映画ですが、インド映画おきまりのミュージカルのような踊りもなく、ドラマの途中に歌いあげるシーンもありませんでした。  2001年、とあるインドの村。プールとジャヤ、それぞれの結婚式を終えた2人の花嫁は同じ満員列車に乗って、花婿の家に向かっていました。しかし、たまたま同じ赤いベールで顔を隠していたことから、プールの夫のディーパクが、間違ってジャヤの手を引っ張り自分の故郷の駅で降ろしてしまいます。  置き去りにされたプ

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          橋爪太作「大地と星々のあいだで」    著者は、元々は社会学を専門とする学者でした。しかし、2011年の原発事故をきっかけに人類学へと転向し、メラネシア・ソロモン諸島で長期のフィールドワークを行なった人です。その調査研究で理解したこと、考えたことをもとに、気候変動とパンデミックに覆われた今を生きるための思考を、文化人類学だけでなく、哲学、科学、などの領域の知見を加えながら作り上げていきます。(新刊2640円)    「たとえ気候変動対策がすべてうまくいったところで、かつての

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          菊地暁編著「書いてみた生活史」    サブタイトルに「学生とつくる民俗学」と書いてあります。「普通の人々」の「普通の暮らし」が現在に至るまで、どのような変遷を重ねてきたかを問う学問です  本書の編者菊地暁先生は、「はじめに」で書いています。  「『もったいない』。本書『書いてみた生活史』刊行の動機はその一言につきる。編者は大阪市立大学(現・大阪公立大学)、京都大学、龍谷大学の三大学で『民俗学』講義を担当してきた。いずれも民俗学専攻のない大学であり、受講生にとって最初で最後にな

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          坪内祐三「日記から 50人、50の『その時』」    2006年に毎日新聞に連載されていたものが、20年ぶりに書籍化されました。(新刊1980円)   連載するにあたって、著者は「五十回の連載で、登場させる人物を毎回変えて行く。そして、その原稿が載る紙面の日付の前後数日(できれば当日)の日記を紹介する。」というルールを決めています。膨大な量の日記を残した作家、例えば永井荷風も、夏目漱石も、三島由紀夫、柳田國男、武田百合子も、一回しか登場していません。  連載はこんな風になっ

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          オリバー・パーカー「二度目のはなればなれ」    それぞれ2度のオスカー受賞経験を持つ、イギリスの名優マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンが、「愛と哀しみのエリザベス」以来50年ぶりに共演しました。   2014年夏、イギリスのブライトンの老人ホームで暮らす89歳のバーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)夫婦は、穏やかに人生最期の日々を過ごしていました。ある日バーナードは、老人ホームの規則を破って、フランスのノルマンディーへの一人旅に出ます。そこではノ

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          朝倉かすみ「よむよむかたる」    北海道小樽にある古民家カフェ「喫茶シトロン」で月に一度開かれている、平均年齢85歳の超高齢者の読書サークル「坂の途中で本を読む会」。最年長は92歳、最年少は78歳で、人の話は聞かない、連絡は一度で終わらない会に、カフェの営業を引き継いだ28歳の安田が、会の企画進行役として加わります。読書サークルは発足20年を迎え、記念誌を製作しようと動き出しますが……..。    著者の朝倉かすみは1960年小樽生まれ。2004年作家デビューし、2009

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