レティシア書房店長日誌
仲野徹著「この座右の銘が効きまっせ」
ミシマ社の新刊を入荷したので、新刊コーナーに並べました。その中に
仲野徹著「この座右の銘が効きまっせ」(新刊1760円)がありました。
ふ〜ん、「座右の銘」か、あんまり関係ないなぁ〜と思いましたが、ページをめくると、こりゃ、面白い!抱腹絶倒や!
「第四幕 こんな座右の名は好かん!」のこんな文章。
「ここからは、こんなんを座右の名にしたらあかんのとちゃいますやろか、というようなものを取り上げていきます。 まず俎上にあげるのは『若い時の苦労は買ってでもせよ』であります。あきませんやろ、これは…….。」
ちなみに著者は、大阪大学大学院医学系研究科病理学の教授を2022年に退官した大阪人です。ミシマ社から「中野教授のそろそろ大阪の話をしよう」、「中野教授の笑う門に病なし」など、コテコテの大阪弁の本を出しています。本書も完全に大阪弁で最後までいきます。様々な「座右の銘」を取り上げて、ユニークな解釈で関西人らしいツッコミ満載に仕立て上げました。今まで、何度も聞いたことのある格言の意味を知ることとなり、結局、私はそのまま一気に読んでしまいました。
で、先ほどの「若い時の苦労は買ってでもせよ」は著者の手に掛かると、こうなります。
「やたらと『若い時の苦労は買ってでもせよ』などとご託を並べるのは如何なものか。たいした理由もなく、若者に仕事などをさせるための詐術ではないか。それどころか、いきすぎたらパワハラで訴えられかねませんで、いまどきは。言うとしても、せいぜい『若い時の苦労は買ってでもしたほうがええんと違いますでしょうか』どまりにしておかねばならない。」
「若い時の苦労は買ってでもせよ」は、「ある程度は真実であるけれど、真に受けすぎるのはいかがなものか。」と疑問を呈して、「しかし、望むと望まざるとにかかわらず、よほどの幸運に恵まれない限り、苦労が降りかかってくることは必ずある。その時には、苦労に飲み込まれてしまわないように、これは苦労のように見えるが苦労ではない、と、できるだけ思いこむことがあらまほしい。」と結論づけています。
本の中に著者が作った格言が登場します。それは、「一貫性はアホの免罪符」というものです。「ある程度の一貫性はいいが、時代はうつろう。なので、しがみついている一貫性が本当に正しいのかどうかを常にチェックしなければならない。しかし、一貫性というのは、どちらかというと好ましいものとされているので、なかなか手放しにくい。そこでこの言葉だ。ある考えに固執するのが果たして正しいのかどうか。何も変えないことの免罪符として維持しているにすぎないのではないか。常に自問すべきである。」
「一貫性がある」という言葉には、確かに反論しにくいものがありますが、著者の指摘になるほどと思いました。コテコテの大阪弁に笑いながら、たくさん学ばせていただきました。おおきに。
●レティシア書房ギャラリー案内
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⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
_RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(1870円/著者サイン入り!)
中野徹「この座右の銘が効きまっせ」(1760円)
青山ゆみこ「元気じゃないけど、悪くない」(2090円)
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