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レティシア書房店長日誌

藤原辰史&後藤正文「青い空、此処で僕らは何をしようか」
 
 興味深い二人の対談がぎっしりと詰まった超オススメの一冊です。(ミシマ社新刊1980円)

 ミシマ社の宣伝を担当している熱意の塊のようなHさんが、本書に登場する後藤正文の本「何度でもオールライトと歌え」が同社から出た時、私がレコード屋出身なのを知っていて、ぜひ読んでください!と情熱的に言われました。でもその時、後藤さんってASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカルの人か…..と頭をよぎったけれど読みませんでした。
 ごめんなさい。この二人の対談を読んで猛反省しました。ミュージシャンが、社会的あるいは政治的発言をすることが厳しい音楽業界にあって、物言う後藤に藤原は問いかけます。

「藤原:あえて言葉にされている。それは、どこかで何か、決断されたと思うんです。その辺は、どういう踏ん切りをされた感じですか。
 後藤:社会的な発言をすることについてですよね。一つは友人から『ゴッチ(後藤の愛称)は清志郎みたいにやんなきゃ駄目だ』って言われて
 藤原:なるほど、忌野清志郎さん。」
 
 そうか忌野清志郎か、なるほど納得です。社会に対する視線、私たちの周囲のある問題を捉え、解釈し、行動していくかを藤原と語っていきます。
 「震災という経験は、僕にとって大きかったです。あの東日本大震災であらわになったのは、僕たちが見ないようにしてきたことだと思った。音楽をやることも不謹慎とされたんですよね。でも不謹慎と言われようが、音楽をやりたかった。人前で何かを歌ったり書いたりすることって、こういう状況で何を書けるかではないか、というところに、自分としては突き当たった。
もうこれは卑下もせず、おごり高ぶったりもせず、とにかくまっすぐ書こうという気持ちになったし、社会に対する責任感が、その時にムクムク芽生えていった。こういう困難の中で、何も発言しないとか行動しないっていうのは、未来に対する責任を果たしていないんじゃないかと思って、仲間を募集して『The Future Times』という新聞を作り始めて。それが大きかったですかね。」と後藤は語ります。
 本書で、公害や環境問題など、この半世紀で私たちを取り巻く解決すべき困難な問題について二人の思っていることを読むことができます。
 「SDGsのSはみなさんご存じ、サステナブルですよね。持続可能という意味ですが、これ自体も大変問題のある言葉で、経済を持続するのか、私たちの暮らしを持続するのか、地球を持続させるのかによって、まったく意味が変わってくる。基本、今のサステナブルは、『持続的に開発可能な』という意味になり果ててきていて、それはおかしいと思っています。そして次のDが、ディベロップメント。開発という言葉ももう、いい加減にやめたほうがいいと思うのですが、明治神宮の外苑も再開発ですよね。」という藤原の発言で、日頃よく聞いたり使ったりする「サステナブル」という言葉の危うさを知りました。
 ミュージシャンと歴史学者という異色の組み合わせですが、どこを読んでも面白い対談集です。

年始年末休業のお知らせ:12月29日(日)〜1月7日(火)

レティシア書房ギャラリー案内
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展
2025/1/22(水)〜2/2(日)「口を埋める」豊泉朝子展

⭐️入荷ご案内
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スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
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モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
YUMA MUKUMOTO「26歳計画」(再々入荷2200円)

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