見出し画像

レティシア書房店長日誌

安田淳一監督作品「侍タイムスリッパー」
 
 アイデアの勝負でこんな面白い映画ができるんですね。元々インディーズ用に書き上げた脚本(監督が書いています)が、東映のスタッフの目にとまり、こんなおもろい奴なら太秦のスタジオ貸したれ(こう言ったかどうか知りませんが)と、話が進み、衣装・小道具も時代劇セットも太秦の力で作り上げました。撮影はカメラも監督が担当し、小さな劇場で公開したところ、瞬く間に火がつき、大手映画館でめでたくメジャー上映です。監督のスタンスがユニークで、実家の農業と監督業を兼業でやっているとか。
 

 幕末の京都、会津藩士高坂新左衛門は、家老じきじきの密命で長州藩士を討ち取るべく、暗闇に身を潜めて待ち構えていました。両者が刃を交えたそのとき、落雷が二人を直撃。やがて新左衛門が目覚めると、そこは現代の映画の撮影所。なんとまさに時代劇を作っている最中の撮影所に、タイムスリップしてしまったのです。何もかも全く理解できない状況で、新左衛門は右往左往するのですが、ひょんなことから知り合った撮影所の助監督に助けられ、生来の実直さで時代劇の「斬られ役」として第二の人生を生きてゆくことになるのです。
 「自主映画で時代劇を撮る」という監督の無謀な試みは、資金難に陥ります。その時救いの手を差し伸べたのが、他ならぬ太秦の東映京都撮影所でした。わずか10名たらずの自主映画のロケ隊が時代劇の本家本元、東映京都で撮影を敢行する前代未聞の事態。なんとか完成させて、2023年10月京都国際映画祭で初披露された際、客席からの大きな笑い声と拍手が起こったといいます。
 撮影所を除けば、大掛かりなロケもCGもなければ、派手なワイヤーアクションもなし。金なし、人脈なしの映画製作。それでも、時代劇への大きな愛を支えに、いろんな人の協力を得て、唯一無二の面白い時代劇が出来上がったのです。
 映画のラスト、「斬られ役」として頭角を現した新左衛門は、新作映画で主人公(これがなんと、かつての長州藩士)の敵役に抜擢され、長い長い対決シーンを演じます。「時代劇」ではなく、ホンマもんの決闘です。いやいや、これ時代劇を撮っている人の物語だったよね、というこの重なり方がうまい。とにかく迫力満点の果し合いです!
 大体タイムスリップものは、もう一度元の時代へと戻ってエンドなんですが、本作のラストは、うそでしょ!そんなアホな!と叫びたくなるようなウルトラC級のエンディング。場内大爆笑!監督のセンスの良さに大拍手!!笑って、笑って、(時代劇好きな女房はさらに泣いてましたが)元気が出ます。

●レティシア書房ギャラリー案内
9/18(水)〜9/29(日)   飯沢耕太郎「トリロジー冬/夏/春」刊行記念展
10/7(水)〜10/13(日)  槙倫子版画展
10/30(水)〜11/10(日)菊池千賀子写真展「虫撮り2」

⭐️入荷ご案内
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本3」(660円)
おしどり浴場組合「銭湯生活no.3」(1100円)
岡真理・小山哲・藤原辰史「パレスチナのこと」(1980円)
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
坂口恭平「その日暮らし」(ステッカー付き/ 1760円)
「てくり33号ー奏の街にて」(770円)
「アルテリ18号」(1320円)
「オフショア4号」(1980円)
「うみかじ9号」(フリーペーパー)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
加藤優&村田奈穂「本読むふたり」(1650円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
孤伏澤つたゐ「悠久のまぎわに渡り」(1540円)

森達也「九月はもっとも残酷な月」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?