観た映画つれづれ(2)
・最近映画を見始めた人が感想をつれづれ書き散らします。
・10作ずつです。
・ネタバレあり。
・評価は点数ではなく、好き度合いで表記。
・レアリティは上から「めちゃめちゃ好き」「かなり好き」「好き」「ふつう」「好きじゃない」。例外アリ。
・変なこと書いてたら鼻で笑って流してください。
『コラテラル』
かなり好き。
トム・クルーズが悪役を演じるということで注目を集めた映画。画像でもセンターを陣取っている。
マックスとヴィンセントの関係性がとにかくよい。映画の多くの部分が彼らの会話シーンなのだけど、まったく飽きない。単なる脅し脅されの関係でなく、お互いの心情に変化を及ぼしあっている。奇妙な友情の気配すら感じる。
特にヴィンセントが味わい深い。殺し屋のくせによく喋る。「60億いる内のひとりふたり殺したから何だ」と虚無的な価値観を語る様は、どこか理解を求めているようにも見える。
淡々と仕事を実行するヴィンセントの存在は、やがてマックスのケツを意図せず蹴り上げる。「恐ろしい敵であり、マックスの覚醒を促す存在でもある」という立ち位置がめちゃくちゃいい。
マックスが反旗を翻すまでのボルテージの上げ方が本当に巧い。
『スパイダーマン2』
ふつう。
積み重なるストレスの描写がつらい。「違うんです、実はこいつスパイダーマンで……」とすごく言いたくなる。
たぶん、ピーターがいちばん辛かったのは「親しい人に隠し事をしていること」だったのではないだろうか。勇気を出して「ベンおじさんの死の原因が自分であること」を叔母に打ち明け、許しを与えられてから、彼の気持ちに整理がつきはじめたように見える。自分の気持ちは宙ぶらりんにするものでなく、ピンと糸を張って操るもの。顔を見た市民たちが「誰にも言わない」と約束してくれたことを経て、彼はもっとも親しい人たちに正体を知られても動揺しない男に成長していく。中途半端だった気持ちにケリをつける様は、前半の抑圧もあって爽快だった。
市民たちがヒーローを支えようとするシーンはやはり癌に効く。
何も悪いことしてないのに最悪の形でフられた婚約者、めちゃくちゃかわいそう。
『バーフバリ 王の凱旋』
バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!
(語彙力をなくしました)
(船上でのダンスシーンが特に好きです)
『吸血怪獣チュパカブラ』
ふつう。
小説にチュパカブラを登場させるので参考資料として観たんですが、こう、「B級ってこういうやつをいうんだな」って初めて体感した気がします。ガタガタのストーリー……あってないようなBGM……イカれた奴はとりあえず笑わせとけっていう演技……とにかく汚い……意外と出ないチュパカブラ……。
でもなんだか嫌いじゃないです。マーライオン式グリーンゲボとか、全然迫力のない銃とか、突然の食人野郎とか、突っ込みどころがちょこちょこ挟まってきて寝させてくれない。
あの食人野郎マジで何だったの?
兄貴との共闘はちょっと燃えた。不覚。
チュパカブラのデザインもよかったです。
食人野郎……(まだ言ってる)。
『ジャンゴ 繋がれざる者』
めちゃめちゃ好き。
タランティーノ監督・脚本の西部劇。絶対おもしろいじゃんと思って観たら絶対おもしろかった。
元黒人奴隷と奴隷制を嫌悪するドイツ人がコンビを組み、悪党白人の農園主に挑むという古い西部劇に対しての明白なアンチテーゼ。KKKの祖先らしき連中も出る。それでいてきっちりエンタメしていて、素直に楽しむことができた。終盤の銃撃戦がめちゃめちゃカッコイイ。
のっけからなぜか『続・荒野の用心棒』の主題歌(そちらの主人公の名前もDjango。Dは発音しない)が流れるのも好き。主人公の名前を連呼する主題歌におれは弱い。
そしてシュルツがあまりにも良い。本当にいいやつ。「アウフ・ヴィーダーゼン」という挨拶を聞くたび、僕は彼のことを思い出すのだろう。
ダイナマイトもあるよ!
『死霊のはらわた(1981)』
好き。
ドバーッってなってグチャーッてなってドローッとなるのを楽しむ映画。これぞ90分ホラーという感じ。若干ダルい箇所はあるけど、ありがちな人間同士の確執とかの描写は薄く、ゴア演出とかがサクサク出てくる。
演出などはさすがに古びているが、全然観られた。特にラストのストップモーションを用いたシーンは圧巻。俳優たちの演技も熱が入っている。チープさが良い方向に作用している好例だと思う。
シンプルなゴアを楽しみたい人に。
『ロック・ユー!』
めちゃめちゃ好き。
原題は『A Knight's Tale』。カンタベリー物語のうちの一篇を下敷きにしており、作者のジェフリー・チョーサーも仲間の一人として映画に登場している。イカした口上で試合を盛り上げる名脇役。
展開も登場人物もとにかく気持ちが良い。終盤まで右上がりの直線を描きつづける王道の成り上がり物語。予想を裏切る展開とかは特にないけれど、馬上槍試合をスポーツとして描いており、人死にもほぼ出ないので、楽しく爽やかな気持ちで鑑賞できること請け合い。
キャラクターのなかでは、やっぱりジェフリー・チョーサーが好き。
口上の格好良さもさることながら、アダマー(主人公の宿敵)の口上役がへたっぴな上に明らかにチョーサーに影響されているのに、彼自身は馬鹿にする素振りを見せなかったのが特に心に残っている。
邦題にもなっているように、クイーンの『ロック・ユー!』などの現代ロックを活用しているのが特色。
冒頭で中世ヨーロッパの人々が『ロック・ユー!』で盛り上がっているところは、個人的に全映画のなかでもトップクラスに好きなシーン。素晴らしいものは時代も国境もフィクションの壁さえも全部ブチ抜いて、魂を揺らせるのだ。
『北北西に進路を取れ』
エエーッ!?北北西!?
好き。
スリラー映画の巨匠、ヒッチコック監督の作品。主人公にとって悪い状況が起こり、解決できたと思ったらそれが更に悪い状況へ繋がっていくという、まさにサスペンスのお手本だった。伏線の利かせ方も実に巧み。
主人公のソーンヒルが魅力的。機転が利き、度胸があり、ユーモアもある。しかし序盤の酔っ払いぶりや母親からイマイチ信頼されていない辺りに生活面での欠点も垣間見えて、それも面白い。
60年以上前の作品ということもあり、アクションや映像面はさすがにチープさを感じるが、筋書きや演技面に不満はまったくなく、最後まで緊張感を持って観られた。
(あまり関係ないけど、この時代のアメリカの靴音がとても好き)
『アメリカン・ビューティー』
しんどい。
しんどい気持ちになる名作は、だいたい僕の心に引っかき傷を残していく。
冒頭のモノローグでレスター自身が語るとおり、これは彼の死によって終結する物語だ。十代の少女に一目惚れし、官能的な幻想(というか妄想)に耽る42歳は、なんらかの破滅を予感させるに十分な姿である。
抑圧されているのは彼だけではない。妻のキャロリンも、娘のジェーンも、皆それぞれに抑圧を抱えている。彼らを取り巻くほかの人々でさえ例外ではない。
そこで描かれている抑圧はとてもありふれたものだ。中年の危機とか、仕事がうまくいかないとか、反抗期とか、理想と現実のギャップとか、セクシャリティの問題とか……現代日本の我々にも共感できるし、だからこそしんどいものを感じてしまう。
しかし抑圧から(倫理的とはいえない方法で)解放された彼らは、打って変わって明るく振る舞うようになる。レスターもキャロリンも車の中でお気に入りの歌を熱唱し、とても楽しそう。けれどその明るさは攻撃性とも繋がっている(レスターは皿をたたき割り、キャロリンは銃を手に入れる)。
何より冒頭で破滅が予告されているのだ。僕はちっとも明るい気分にはなれず、終盤では緊張しっぱなしだった。バーナム家はどんな悲惨な最後を迎えてしまうのだろう?
終盤の展開は、僕が想像したものとは違っていた。ほんのわずかではあっても、家族の形に希望が見えたような、そんな予感を抱かせるような展開だった。
けれど、これはレスターの死によって終結する物語だ。
バーナムという家族が修復可能なものだったのか、散ったバラのように元には戻せないものだったのか。
その問いは、僕の心に引っかき傷となって、ずっと残るのだろう。
しんどい気持ちにはなったけれど、名作です。
ジェーンは幸せそうだと聞いた時のレスターの微笑みを、僕は忘れることができない。
『ファイト・クラブ』
好き。
観るまえは「『ファイト・クラブ』という名前の地下闘技場でブラピがチャンプを目指し成り上がっていく物語」なのかなと思ってたのだけれど、全然違った。資本主義社会に対する割と明確な、かつ破壊的なテーマを持った映画。健常者を自認する人なら十中八九「子供には見せたくない」と言ううと思う。
とはいえ難しさに頭を悩まされるような映画でもない。主人公とタイラーはそれぞれに機知に富み、かつ危険な匂いも漂わせる魅力的な男たち。ブラピの一挙手一投足はキビキビとしていてカッコイイ。殴り合いの描写もガチで、流れる血は重油のように黒い。バイオレンスが苦手な人なら顔を背けたくなるかもしれない。
序盤にチラチラと仕込まれたサブリミナルやタイラーのキャラなど、ミステリアスな要素も意外と多い。単なるマッチョ映画と侮るなかれ。