3地域がバトル!書籍「縄文ルネサンス: 現代社会が発見する新しい縄文」後編
いま縄文に関する活動を行うことにどのような未来があるのか、書籍「縄文ルネサンス:現代社会が発見する新しい縄文」を読んだ感想の後編です。
前編では、縄文についての過去から現在に至る縦の流れから、「ルネサンス」が起きようとしているのではないかという視点・全体像を得たことが有益だった点について触れました。
後編では、どこの地域が縄文を熱心に取り組んだか、どんなジャンルに広がっているか、という横の流れについてです。
縄文ブームが起こるからにはどこかで誰かが頑張っているわけですが、特定の地域で起こるからには、町おこし、地方創生、地域のアイデンティに関わる側面がある。
本書では、①北海道・北東北、②新潟、③長野・山梨、という縄文を牽引する三つの勢力があげられています。
①北海道・北東北
北海道・北東北は、これまでの縄文のイメージを覆す、大規模で長期的な定住生活があったことを示す三内丸山遺跡があるところ。「世界遺産」への認定を目指すという政治的な動きを始め、十数年の歳月を費やして2021年に世界遺産に認定。
ここには、昔は蝦夷と言われ、後進的なイメージがある北海道・東北が実は縄文時代は日本の中心だった、日本は北海道・東北から始まる、という地域のアイデンティの見直しに関わっている側面がある。
②新潟
新潟(信濃川流域)は火焔土器の産地。縄文土器には様々な種類があり、火焔土器はその一種にすぎないのですが、火焔土器こそが日本の縄文を代表するものであるとして、日本遺産としての認定を獲得する(「なんだ、これは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国文化)。そのほか、先般の東京オリンピックのときは「聖火台を火焔土器に」という運動をするなど、縄文の中心地は新潟である、という地域のアイデンティティ形成と関わっている側面がある。
③長野・山梨
③長野・山梨(中部高地)は黒曜石の鉱山があるところ。黒曜石は加工しやすく、矢じりやナイフなどに使われている。縄文時代にこの地方の黒曜石が全国的に流通しており、技術革新の中心地として栄えた。日本遺産に認定されている(「星降る中部高地の縄文世界—数千年を遡る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅─」)。
中でも、国宝と認定された土偶2体が出土した長野県茅野市が積極的に縄文に取り組んでいる。
これらの取り組みは、長野・山梨が、縄文時代、シリコンバレーのような技術革新の中心地であったという地域のアイデンティ形成に関わっている。
以上、様々な地域で縄文に関する活動が行われていて、全体像が見えない中で、この三大勢力を知ることで、日本の縄文活動の解像度が上がりました。
このほか本書では縄文と現代アートの活動についてもふれられています。詳細は本書をご覧いただくとして、その趣旨は、ヨーロッパのルネサンスで、絵画「モナ・リザ」のレオナルド・ダ・ビンチ、彫刻「ダビデ」のミケランジェロ、文学「新曲」のダンテなどが活躍したように、縄文ルネサンスによって新しいアートなどが生み出される可能性があるということ。
ルネサンスが古代ギリシアローマの単なる模倣ではなかったように、縄文ルネサンスも縄文の模倣ではなく、新しいアートを生み出そうとしている、という視点にはワクワクしました。
以上、本書を読んで「ルネサンス」という視点を得たり(前編)、代表的な3地域の取り組みを知ったりすることで(後編)、縄文の活動がより楽しみになりました。
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