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原発@韓国①

 ゴリ(古里)原発1~4号機(釜山市)の敷地を囲むフェンスの目と鼻の先に住宅が並ぶ。「原子炉から住宅街まで700メートルしか離れていません」。バスで通過する際、現地スタッフからそう説明があった。「東海村と似ているな」。頭には原発敷地を出るとすぐに住宅地が広がる東海村の様子が思い浮かんだ。
 現地視察当日の9月21日は、あいにくの小雨。ゴリ原発1~4号機が見えるカフェに向かう。カフェの目の前は海で、何艘もの小さな船が波に揺られている。昔から港だと思っていたが、砂浜だったという。説明してくれた女性は言う。「この集落には鉄道も、外国船が来る港もあり、豊かだった。しかし、原発が建設されてから釜山で一番貧しい地域になった。集落に住む人は生活手段を失った」
 川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と同じではないか。川内原発から一番近い滄浪(そうろう)小学校は廃校に。市中心部の商店街も活気を失っているように見える。「地域振興のために原発を──」。その言葉が頭の中に虚しく響く。
 川内原発と同じ状況にあるのは、地域の姿だけではない。九州電力は川内原発1、2号機の20年運転延長を申請し、現在、原子力規制委員会で審査中。ゴリ2、3号機でも事業者が運転延長を申請している。運転延長に対する闘いは韓国でも展開されており、県民投票の会メンバーの一人として、心強く感じた。
 ゴリとシンゴリ原発は釜山市、セウル原発は蔚山(うるさん)市だが、河川を一つ挟んだだけで、実質的には同じ敷地。2019年までにセウル1、2号機が稼働。現在、セウル3、4号機が建設中で、セウル原発5、6号機誘致の署名活動も行われているという。ゴリ、シンゴリ、セウル原発の非常計画区域には約380万人が居住。世界最大の人口密集地だ。
 東京電力福島第1原発事故を受け、韓国でも計画区域を8キロから20~30キロに拡大。蔚山市は当初から計画区域を30キロとしていたが、釜山市は当初30キロまで拡大すると人口が多すぎるため、「実効性がない」との理由で、計画区域を20キロとしたが、住民側の強い働きかけの結果、2022年末に30キロにまで拡大した。
 古里集落は原発建設のために、集団移住させられたという。避難計画を立てなければならないこと自体、その土地を追われるリスクを抱えているということにほかならない。川内原発が再稼働する際、避難計画の妥当性も議論された。当時、避難計画の説明会も取材したが、住民と行政側の間には大きな溝があると感じた。それは、被ばくに対する認識だ。
 日本政府が「妥当」とする避難計画は、少々被ばくしても人体に影響はないということが前提だ。韓国でも時間内に避難できるかどうかが懸念されていると言う。日本も韓国も、原発を動かしたい国や事業者にとって、国の経済のためには地域住民の被ばくは仕方のないこと、許容範囲、ということなのだろう。
 国のために我慢しろ──。戦争と同じではないか。軍事機密と同じように、核物質防護のためとして、原発の情報も隠される。このような非民主的な発電装置を持つこと自体、民主主義国家ではないといっても過言ではない。NNAFでも、各国の参加者から「民主主義の問題」という発言が相次いだ。市民の力で原発をなくし、民主主義をつくりあげていかなければならない。そして、県民投票の実現がその一歩だと確信した。
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 9月18~23日、韓国であったノー・ニュークス・アジアフォーラム(NNAF)に、県民投票の会メンバーの一人として参加した。NNAFには、韓国、台湾、タイ、フィリピン、インド、トルコから活動家が参加。日本からはジャーナリストや活動家計18人が参加。現地では、韓国国内の原発視察や気候正義行進などに参加。県民投票に向けた署名活動についても報告した。韓国で感じたことを2回に分けて書いてみます。

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