本屋開業まで⑨
初回の注文で新刊は約800冊。そんな数の本を相手にしたことはなかった。とりあえず棚に並べていた本を一冊ずつ取り出し、クラフト紙を敷いた床に並べていく。積み重なっていく本。本の山、山、山。店は5坪だが、床はおそらく2坪ほど。足の踏み場がなくなる。
全部の本を床に置き終えると、そこには混乱の文字が浮かび上がっていた。まさに、 "una selva de libros" の状態。頭も混乱の極みに達した。こんな時は、手巻きタバコを一服。心を落ち着かせる。
書店員経験がない私が本を並べる際に参考にしたのが、『本屋、はじめました(増補版)』(辻山良雄著、ちくま文庫)。そこにはこう書かれている。
「ここに置いている本の並びはなんだろう」というような既存のジャンル分けにあてはまらないような曖昧な部分を残しておいたほうが、それを見る人の視線を止めるような引っかかりが出て、棚のアクセントにもなり面白いと思います。(p138)
本はゆるやかに他の本ともつながっているので、カテゴリー分けをすることは、そうした本のつながりを分断してしまうようなことにもなり、並んでいる本を見ていく面白さを削いでしまうのです。(p139)
確かにそうだ。
大型書店を訪れて、「この本を買おう」と思っても、「*****」というジャンルに分けられ、それが自分の考えと馴染まないとどうしても手に取る気を失ってしまうことがある。新聞社を辞め、本屋を始めようと思ったのは、白黒はっきりしない、無数の色が混じり合う場、考える空間を作りたかったからだ。
よし、「曖昧な部分を残」すようにしよう。1週間ほどかけて、本を並べてみた。現状ではうまくいっているとは思えないが、どうしようもない。自分の力量の範囲内でやることが大事だ。
カレンダーを見ると、11月も終わりそうだった。みなと大通り公園のライトアップが12月2日始まる、らしい。それに合わせて12月1日にオープンしてしまおう。
ということで、12月1日にオープン(プレ)しました。
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これで、「本屋開業まで」は終了します。
次回のテーマは決めていませんが、店にまつわることを書く予定ですので、よろしくお願いします。
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