筋トレ─耳と指
ピアノって結構筋力がいることに気が付いた。
普段は大工で筋トレおじさんの私、そこそこ筋力には自信がある。
そう、使っている部位に関しては、だ。
指の筋力、特に左手の小指と薬指がなかったことに気づいた、去年の冬。
指の独立と筋力を付けることが僕はすぐには出来なかった。
それを解消しながら、指の筋力を付けることになった。
5,4(左手小指と薬指)が出てくる箇所を5,4,5,4,5,4と繰り返して次の音。
また、5だけ一小節分伸ばしながら他の音を弾く。
リズム変奏パターン複数。
スタッカート。
これらをフォルテッシモで何度もゆっくり弾く。
暗譜し切るまで次の小節に移らない。
これらを徹底するように先生に言われた。
ずっとゆっくり弾いていても速く弾けない。
でも速く弾くには、先生曰く
「筋力がある前提での脱力も必要だから」
だそうだ。
つまり、リズム変奏とスタッカートとフォルテッシモは指の筋トレ?
普段使わなかった筋肉は実は指だけではなかった。
筋肉というのだろうか?わからないけれど、耳も重要だった。
割と僕は耳が良いと思い込んでいた。
かなりの思い込みだった。
レッスンの最初に聴音をする。
3度、6度の和音を当てるゲーム的なものだ。
ちんぷんかんぷんだった。
でもなんとなく位相は違っても音と音の開きはわかる。
僕が先生にテストすると、先生はパーフェクトに当てる。
最初はちんぷんかんぷんでも、一年やると、なかなか当てれるようにもなってきたことに気づいた。
耳の力も結局は鍛えていないと惰性的になるのだろうか?
もしかして僕は何もかもを惰性的で独りよがりな思い込みして過ごしてきたのだろうか?
そんな風にすら思えてきたこともあった。
そして話が飛ぶのだが、指の筋力はピアニストにとって命の次に大事な筋力。
かつて天才バッハ弾きとしてデビューしたブラジル人ピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスさんをご存知だろうか?
彼はこれでもかと言うくらいにピアニストとしての大事な指にハンデを負う事故に遭いながらも音楽を諦めない音楽家だ。
その彼の半生を映画化した「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」を家族で観た。
映画で使用された音源は全てご本人のものだそうだ。
最後のシーンは泣けた。
なぜ泣けたのか?映画を最後まで観てほしい。
そして、最近の彼の様子がご本人のInstagramにアップされてもいた。
なんとも言えない表情でピアノを弾く姿を見てまた泣いた。
不撓不屈を体現される素晴らしい音楽家だと思う。
ぜひ機会があれば映画を観て見てほしい。
この記事が参加している募集
いただいたサポート費用は散文を書く活動費用(本の購入)やビール代にさせていただきます。